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平和な日常~冬~6

「マスター、はいバレンタインチョコあげるね。」

「おう、ありがとう。 本命の方も頑張れよ!」

さて木乃香達からチョコを貰った横島は木乃香達のチョコは夜にゆっくりと食べることにして店を開けるが、この日は早朝からバレンタイン用スイーツを買いに来た女性達といつもの朝の客で店はすぐに混雑していた。

木乃香達もぎりぎりまで手伝うことにしたのでどうにか店は営業出来ているが、横島は木乃香達が懸念した通り常連の女子中高生を中心にした女性からバレンタインチョコを次々と貰っている。

まあ流石にほとんどは義理チョコであり、中には本命のチョコにとバレンタイン用スイーツを横島の店で買っていく者も多い。

ただ木乃香達から気持ちの入ったチョコを貰った影響で横島も気持ちに余裕が出来たからか、あまり大袈裟にすることもなければ嫉妬することもないまま普通にチョコを受け取りバレンタイン用スイーツを買う客には頑張れと声もかけていた。

そんな横島を見て客の女性達はやはりモテる男は余裕があると誤解を深める者も居たが、幸か不幸か木乃香達の苦労と心配は伝わってないようだった。


「はい、タマちゃんにもバレンタインチョコあげる。」

「わーい! ありがとう!!」

ちなみに何故か横島と一緒にタマモもバレンタインチョコを貰っていて数も横島より多かったりもするが。

まあ日頃からお土産なんかを配るタマモだけに、この機会にとあげる女性が予想以上に多いようだ。


「こうして見てるとモテるんですよね。 横島さんは。」

一方貰ったチョコには本当に嬉しそうにするし買っていく人には一言激励やアドバイスを送る横島の姿に夕映は、本当にモテて当然だなとなんとも言えない様子でしみじみと呟く。

実際ここまでこぎ着けるまでには木乃香達がバレンタインにトラウマがある横島を宥めたりして結構大変だったが、いざ当日になるとやはり横島は上手くやっている。

基本的に自分のことになると恋愛オンチでどうしようもない横島だが実はそれは木乃香達など身内に近い者しか知らなく、他人の恋愛になると割りと的確なアドバイスを親身になってするので一般的にはかなり評判がいい。

特に今年のバレンタイン絡みで横島が受けた占いの依頼や恋愛相談は五十人近くにもなる。

まあ美砂達なんかは何故その客観的な考えが自分には出来ないのかと、以前不思議そうに悩んでいたが。


「でも感動して涙見せたりしてなくて良かったね。」

なお夕映と一緒に仕事をしながら横島の様子を見守っていたのどかは、横島がバレンタインチョコを貰う度に感動して涙を見せなくてホッとしていた。

先程は木乃香達のチョコで涙を見せる寸前まで行っただけに、他の人から貰っても同じなのかと少し心配していたらしい。

木乃香達は横島をよく知るのでいいのだが、あまり横島をよく知らない人がバレンタインチョコを渡して泣くほど喜ばれるといろいろ誤解されそうだと思っていたのだ。


「それだけ私達には心を許してくれてるのでしょうかね。」

普段はあまり意識しないが横島がネガティブになったり不安を口にするのは誰にでもしている訳ではない。

木乃香達に美砂達にあやかと千鶴と刀子が相手の時くらいだった。

従って横島がバレンタインにトラウマがある話もごく一部の常連や2ーAのクラスメート以外はほとんど知られてない。

夕映ものどかも横島が他の女性からチョコを貰う姿を見てると心の中に微かなもやもやした気持ちを感じるが、それでも自分達しか知らない素顔の横島を知ると思うと少し楽になる気がした。



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