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平和な日常~冬~6

「アスナ、バレンタインどうするん?」

「あげるわよ。 これ以上トラウマ増やしたくないし。」

そして木乃香と明日菜の部屋では三学期の期末のテスト勉強をする明日菜に木乃香がバレンタインのことを聞いていた。

木乃香自身は今日試作したチョコを使ったスイーツなどのレシピや要点を専用のノートに清書しつつ明日菜に問い掛けていたが、その答えに感慨深いものを感じる。

ちょうど一年前の今ごろは明日菜は高畑にバレンタインチョコを渡したいと騒ぎつつも、どうやって渡せばいいかと一人で苦悩していたのだ。

結果的に明日菜は昨年は渡せずに来年こそは渡すんだと意気込み高畑に渡せなかったチョコを自分で食べるはめになったのだが。


「高畑先生はええの?」

「もちろんあげるわよ。 高畑先生が大切な人なのは変わらないもの。 でも高畑先生に告白する気はないかな。 私にとって高畑先生は大切な家族だから。」

バレンタインと聞き第一にトラウマを抱えた横島の話をする時点で明日菜は変わったが、同時に高畑との関係もまた変わったというか戻ったのだと木乃香は実感する。

一年前には明日菜が高畑を大切な家族だと冷静に言うなど考えられなかった。


「今年は年末年始に横島さん達と高畑先生と一緒に居て改めて考えたの。 高畑先生のこと。 横島さんとタマちゃんが家族であるように私と高畑先生もいつまでも家族なんだなって。」

木乃香はあえて一年前の話は持ち出さなかったが、明日菜もまた一年前の事を思い出し少し恥ずかしそうに現在の心境を語る。

特に考えを変えようなど思った訳ではないが横島とタマモを間近で見ていたことや、昨年の年末から高畑とゆっくり話す機会が多かったことが影響していた。


「……ねえ、高畑先生が恋人作ったり結婚したりしないのは私が居たからかな?」

「ウチは違うと思うわ。 高畑先生って、ちょっと前の横島さんみたいに自分の周りに見えない壁作ってた気がするんや。 多分そのせいやって思う。」

そんな明日菜であるが高畑を家族であると認識して以降、いろいろ細かいことが気になり始めている。

三十近い年齢の高畑であるが明日菜が記憶してる限り過去には恋人らしい恋人すら居たことはない。

なんとなくタマモを育ててる横島を見てると考えてしまうようで、高畑が恋人も作らなかったのは自分のせいかと気にしていた。


「それは確かにそうかもね。 なんていうか一歩引いてる感じは昔からあったかも。」

「理由はウチには分からへんな。 お爺ちゃんとかエヴァちゃんとか横島さんなら知ってる気もするけど。 聞いても教えてくれへんと思うわ。」

ただ不安を感じる明日菜に対し木乃香は高畑自身の過去に何かあるのではと考えている。

明日菜ほどではないが木乃香も麻帆良に来て以降高畑と交流があり、それなりに付き合いは長い。

昔はあまり感じなかったが横島と一緒に居るうちに高畑にも横島と似た違和感を感じるようになったのだ。


「聞いちゃダメなのかな?」

「聞いてもええと思うよ。 すぐに話してくれるとは思えへんけど、無駄やないと思うわ。」

家族として高畑を見て以降明日菜は高畑のことが心配に感じるようになっていたし、横島達のようにきちんと家族として向き合いたいとも思うようになっている。

そして過去に何があり高畑は周りから一歩引いてるのか、明日菜は高畑に直接聞いてみたいと思うようだった。

木乃香はそんな明日菜に聞きたいことは聞いてもいいと言うものの、同時に答えを焦って求めない方がいいとも口にする。

現状で明日菜の意思表示をするのは必要だと思うが、そこから先話せるかどうかはまた別問題なのだ。

結局明日菜は木乃香の意見を頭に入れつつ、バレンタインというより今後高畑とどう向き合うか考えることになる。

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