このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

平和な日常~冬~6

「甘いわ!」

「そうですか? チョコレートケーキですからこんなものかと。」

この日の夜になると女子寮の夕映とのどかとハルナの部屋では、夕映とのどかがバレンタインの試作チョコスイーツの余り物をハルナにおすそわけしていた。

日頃から夕食は横島の店で食べるハルナだが、放課後や土日をほぼ横島の店にずっと居る夕映とのどかとは違い彼女はさほど入り浸るほどではなく余り物を貰うことが多い。

この日も余り物をおすそわけすると最初は喜んで食べていたが、夕映とのどかがバレンタインのチョコ商品の販売個数なんかを考え始めるとハルナは突然甘いと怒ったように叫ぶ。


「ケーキのことじゃなくてあんたたちのことよ! なんで中学生がバレンタインで仕事の話ばっかりなの!? もっとこうハラハラドキドキのイベントのはずでしょう!!」

突然叫ぶハルナに夕映とのどかはおすそわけしたケーキの話かと言葉を返すも、ハルナはバレンタインにも関わらず普通に仕事話を真面目にしている二人に何故か怒っている。


「でも私達が考えないと横島さんが適当に決めると何をやらかすか解りませんから。」

突然感情を露にするのはハルナにはよくあることらしく夕映とのどかの二人は冷静であり、最低限販売個数や宣伝をどうするかは自分達が決めなくてはならないと告げる。

実際二人が寮で横島絡みの仕事をすることはよくあることだった。

基本的に美味しい物を作りたいとしか考えてない横島は料理自体はきちんとしてるが、商売の方は相変わらず興味が薄くいい加減なので夕映達が放っておくと気分で作る量や値段を決めたりといい加減なのだ。


「あんたたちがそんなだからあのマスターはいつまで経っても女心が分からないままのよ!」

なんというか周りから見て心配になるほど安定した関係になりつつある友人が、ハルナとしては心配であり面白くもないらしい。


「そう言われましても美砂さんとか桜子さんがあれだけアプローチしてもダメですからね。 私達ではどうしようも。 まあバレンタインはあげるつもりですが。 あげないとまた拗ねるので。」

ただ夕映達からすると刀子や千鶴に美砂達などの色気もある女性でも横島は現状のままなのだから、自分達のような色気もない女に何が出来るのかと普通に思うようだ。

夕映とのどかはお互いの胸元を見て何とも言えない表情で溜め息をつく。


「あの手の男は強引なくらいでないとダメなのよ!」

「ハルナも彼氏出来たことないよね?」

まあ二人もなにもしないという訳ではなくバレンタインはチョコをあげようとは決めてるようだが、ハルナはそれだけでは全然ダメだともっと過激なことをさせようとする。

しかし過去に彼氏が出来たこともないハルナに言われてもイマイチ説得力がなく、のどかにまで突っ込まれる始末だった。


「本当あんたたちって、変に安定してるって言うか達観してるって言うか……。」

結局いくら声高に叫んでも反応が薄い友人にハルナは呆れたように座ると食べかけのケーキを食べる。

ぶっちゃけハルナからすると夕映とのどかばかりではなく美砂達や刀子までもが、横島を囲うように連帯感を強める姿は少し外から見ると変ではあった。

仮に百歩譲ってそこはまだいいとしても、横島との関係を友情に固定しかねない夕映達の現状には危機感を持って欲しい。


「どのみち横島さんと一緒に居るには普通の人生は無理だと思うです。 ただそれでも私は今のところ現状から離れるつもりはありませんが。」

そんな心配と面白くない現状が不満げなハルナであるが、対する夕映とのどかは意外にもそれなりの覚悟自覚しつつある。

刀子と違い将来どころか結婚ですらまだ身近に感じれない二人とすれば、仮に今から横島と離れ普通の男性と付き合うなりしたいかと言えば答えはノーであった。

それはただ一緒に居たいという未成年らしいシンプルな思いであり、同時にもし横島が女性として求めてくれたらと考えもする。

まあ横島と一緒に居続けるには一般的な価値観は変えていかねば多分無理なんだろうなとは二人も思っているが、結局はそれ以上に一緒に居たいとの想いが強いだけだった。


16/49ページ
スキ