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平和な日常~冬~5

「うわ~、いい眺め。」

さて近衛邸での仕事を終えると暦は二月に入っていたが、そんなこの日横島は木乃香達と美砂達とあやか達に刀子とさやかを加えたメンバーでエヴァの別荘に来ていた。


「全くあの男は子供が守れる秘密も守れんのか。」

ことの発端は数日前に遡るのだが、横島宅の夕食に顔を出した高畑に誰かが魔法の練習はしてるのかと問い掛けたことが始まりである。

ついうっかりエヴァの別荘で練習をさせてもらってると話してしまったことで、少女達にエヴァの別荘が知られてしまい行ってみたいと騒ぎ出したことが今回の訪問に繋がっていた。


「まあまあ、いいじゃんか。 今日は蟹をたくさん持って来たぞ。」

ここで少女達が普通にエヴァの家に押し掛ければ多分エヴァは拒否をして終わりだったかもしれないが、流石に突然押し掛ければ迷惑になると考えて仲がいいタマモにエヴァに頼んでくれるようにお願いした結果エヴァは断りきれずに受け入れる羽目になっている。

タマモもタマモでまたみんなで美味しいものを食べようと頼んだため、エヴァはいろいろ考えた結果押しきられていた。


「暑い~!」

「また南国なのね。 横島さんといいエヴァちゃんといい魔法使いって南国好きね。」

真冬の寒さで冷えた身体に常夏の別荘は暑いくらいで、今回は事前に行く先が常夏だと知らせていたので少女達は持参した薄着に早々に着替えていく。

不思議な世界に来るのも二度目なので現代っ子で適応力がある少女達はほとんど驚きもなく、エヴァの別荘にすぐに馴染み何人かはさっそく水着に着替えて砂浜に駆けていく者も居た。


「これが噂の魔法球なのね。 凄いわ。」

「刀子さん知ってるんですか?」

「西洋魔法をかじったことがある人なら大抵知ってるわね。 一定の領域を特殊な魔法の球に封じ込めることにより箱庭のように個人のプライベート空間になるの。 最高級のマジックアイテムで当然一般には販売されてないわ。 闇取引だと小国の国家予算より高いって話よ。」

そのまま横島は持参した食料を別荘の厨房に運んでいき別荘の頂上には刀子・あやか・千鶴・さやかの四人が残っていたが、なんというか一番驚いていたのは魔法使いとして常識人の刀子である。

魔法球は最高クラスのレアアイテムであり当然ながら刀子では見たこともない。

ちなみに少女達はプライベートで刀子を先生と呼ぶのを止めようということにしていて、大抵が名前でさん付けしていた。

以前も少し説明したが刀子を教師ではなく友人として扱おうという一貫でのあり、事情を知らない横島も最近はなんとなく釣られて同じく名前で呼んでいる。

当の本人は今も若干の気恥ずかしさがあるようだが、異空間アジト訪問以来ほとんど教師としての立場ではなくなったため次第になれて来ていた。


「流石は闇の福音ですわね。」

真っ先に遊びに行った少女達はまだ知らないだろうが、エヴァの正体を刀子は元より雪広姉妹と千鶴はすでに知っている。


「私の正体を知っていてここに来るとはおめでたい連中だ。」

「貴女の過去に何があったのか私は詳しく知らないけどそういう言い方はするものじゃないし、メガロメセンブリア人みたいな価値観の押し付けは良くないわ。 神々が実在した横島君の世界だって絶対的な善悪の基準があったのか怪しいのに。」

ついエヴァの異名を口にしたあやかにいつの間にか近くに居たエヴァは皮肉めいた言葉を口にするも、すぐに刀子に反論されてしまう。

その瞬間ほんの僅かだが重苦しい空気がエヴァと刀子を支配するも、それは驚くほどすぐに消え去ることになる。


「そういえば貴様は神鳴流宗家に近い立場だったか。」

「ただの末端です。 しかし関東に来る際に青山先輩に言われました。 最終的に人の敵は人なのだと。 決して敵を見誤るなと。」

別にエヴァとしても刀子達個人に苛立ち喧嘩を売ってる訳ではなく、普段から横島や近右衛門相手にも言葉がキツいエヴァだけにそれが普通であり軽い嫌みが入ってるくらいだろう。

そんなエヴァの言葉を綺麗事とも受け取られかねない言葉で返した刀子にエヴァは詠春の面影を見る。

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