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平和な日常~冬~5

「あれから半年が過ぎたか。」

一方魔法世界の辺境の田舎ではネギの祖父が並んで魔法の矢の練習をするネギとアーニャを見守っていた。

ネギの魔法学校卒業と同時に追い出されるように故郷を出たネギと祖父であるが、皮肉なことに今の生活は平穏なまま安定している。

相変わらず魔法世界各国や地球側の魔法協会などの監視の目は厳しいが、言い換えればその監視の目がある限りは自分達が不用意な争いから守られていると思えば悪くはない。

完全な自由とは言いがたいが下手に完全な自由を求めると、今度は監視の目がなくなり暗殺などの危険もない訳ではなく匙加減が難しい。


「メルディアナの現状を思えば複雑だがな。」

今のところ現状に大きな不満はなく、最近になってネギとアーニャにも少しではあるが攻撃魔法の初歩である魔法の矢の練習をさせていた。

ネギにはあくまで魔法のコントロールを覚えさせる為の練習であったが、ネギもアーニャも地味な基礎魔法や不得意な治癒魔法の練習を嫌がりもせずにやっていたので多少ではあるが好きな攻撃系の魔法の練習も始めていたのだ。

祖父は競うように魔法の練習をする二人を満足げに見守っていたが、ふと故郷であるメルディアナのことを思い出すとその表情が曇ってしまう。

歴史と伝統あるメルディアナは今やメガロメセンブリアに飲み込まれてしまった。

かつての仲間達からは何度か助けや助言を求める手紙が届いたが、祖父はそれに対して自分はもう終わった人間だと返事をして今ある仲間で力を合わせ協力するようにとのメッセージを送っている。

故郷の危機に対して祖父は自分でも冷たいなと思わなくもないが、先にネギを見捨てる決断をしたのはかつての仲間達の側なのだ。

正直なところ祖父はメルディアナを出る前からこの展開を半ば予想していたものの、どうすることも出来なかったというのが本音だった。

かつての仲間達には生前のナギが散々迷惑をかけたし、ネギに対して冷たいのも仕方ないとは思っている。

しかし同時にメガロメセンブリアと繋がるゲートのあるあの地は本当に難しい場所なのだ。

元々メガロメセンブリアの人間には旧世界の人間のことなどほとんど眼中になく、メルディアナの問題もメガロメセンブリア市民はたいして気にしてない。

よくあるお偉いさん同士の権力闘争としか見ていなく、ワイドショーのような番組で多少騒いで終わりだった。


「クッ! もう一度勝負よ!!」

そしてそんな祖父の視線の先のネギとアーニャであるが、二人は魔法の矢を放つ早さを競って勝負をしているらしい。

潜在的な才能のせいかやはり魔法に関してはネギの方が上達が早く、アーニャはそんなネギに対抗心剥き出しである。


「アーニャ、まだやるの?」

「当然よ! 勝つまでやるわ!」

魔法の実力もあり学校の勉強もネギが一枚も二枚も上手だったが、それでも人間性というか精神面は元々一つ年上のアーニャの方が基本的には一枚も二枚も上手だと言っていい。

世間知らずで周りの空気が読めないネギには必要不可欠な存在である。

無論双方ともに年相応な面は多々あるが。


「二人ともご飯よ。」

「仕方ないわね。 今日はこのくらいで許してあげるわ。」

その後二人の魔法の練習はネカネが食事に呼ぶまで続くことになるが、二人は食事を食べながらどうすればもっと早く魔法が撃てるようになるかと互いに意見を出し合いながら試行錯誤していくことになる。

祖父とネカネは基本的にはそんな二人を見守る姿勢を崩さずに暖かく見守っていた。
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