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平和な日常~冬~5

「確かに見た目は普通の料理と変わらへんな。」

そして料理が出来上がるとそのままの流れで夕食になるが、当然見た目はほとんど普通の料理と同じである。

ただし香りは幾分いいように感じるし、味も多少ながら違いはあった。

それと少女達は気付かないが一番の違いは料理に魔力が含まれることだろう。


「美味しいし体にもいいんだが、一般にはだせんからなぁ。」

「イメージ的に薬膳料理に近い気がしたのですが……。」

「基本的な考え方は近いし薬膳の知識も使う時はあるかな。 ただ本来の魔法料理は西洋料理が基本なんだよ。 俺はあんまり気にしないけど。」

結局いつものように和気あいあいとした夕食になるが、あやかや千鶴なんかは薬膳をイメージしていたようで食材も調味料も基本的にはいつもと変わらない物を使う魔法料理には少し驚いていた。

魔法料理の場合は今ある食材の力を引き出して使うことを基本にするので、特別食材を選ぶ必要はあまりない。

無論薬膳のように効果が高い食材を選べば相応に料理としての効果も上がるが、よほどの場合でない限りは必要ないことである。


「そう言えばさ、魔法の薬とかってないの?」

「あるぞ。 確か麻帆良でも魔法協会に行けば買えるはずだったような……。」

そんな夕食も終盤になると少女達は食後のお茶をのみながら魔法料理の効果について話していたが、ふと魔法繋がりで魔法の薬の存在を尋ねたのは美砂だった。

イマイチ使い道があるのかないのかも分からない攻撃魔法に興味が持てない少女達は、基本的に攻撃魔法以外に興味を示すことが多い。

魔法の薬なんかがあればいいのにとのシンプルな疑問からの問いかけであったが、横島はだいぶ前に土偶羅が纏めたその手の報告書を思い出しながら答える。


「惚れ薬は!?」

「惚れ薬は売ってないわよ。 そもそも精神操作系の魔法の使用や魔法薬の販売と販売目的の製造は国際的な魔法に関する条約で禁止されてるわ。 」

魔法の薬という存在に一部の少女達は一気に盛り上がりハルナはすぐに惚れ薬の存在を尋ねるが、それに答えたのは仕事終わりで店に来たばかりだった刀子だった。

ハルナが何故惚れ薬を言い出したのかは不明だが、その言葉には他の少女達も敏感に反応して横島は昔を思い出したのか微妙に引きつった表情を浮かべる。

少女達はともかく何故横島がそんな表情をするのか刀子やエヴァは多少気にしつつ、刀子は惚れ薬に関する説明をしていく。


「そんな条約があるのですか。」

「まあ実際には麻帆良だと無理だけど今でも発展途上国とか行けば買おうと思えば買えるけどね。 あと惚れ薬の解除薬なんかは麻帆良でも買えるわ。 でも違法魔法薬は危ないから万が一手に入っても使おうと思ったらダメよ。 品質や効果がいい加減な粗悪品がほとんどなの。」

魔法に関して国際的な条約があることや麻薬のように違法指定された魔法の薬があることに少女達は驚くも、結局は現実問題としてリアルにある違法薬物の問題と同じなんだとの認識に至る。

違法の魔法薬は製造が一般人には無理なので麻薬ほど普及はしてないが、一部の魔法使いや魔法協会では資金稼ぎにと製造販売してるという事実もある。

ちなみにメガロメセンブリア系の魔法使いなどは、それらの犯罪の摘発と根絶も地球側での活動目的の一つに上げているが。

ただこれらの違法な魔法薬は、実は麻帆良を始めとした一般的な地球側の魔法協会の大半では研究目的に多少ではあるが製造や入手しているのが実情であった。

基本的にこの手の薬は解除薬が必要不可欠であり、日々進化や変質する魔法薬の研究は魔法協会の主要な業務の一つになるのだ。


「チッ、ダメなのか。」

「ハルナ、惚れ薬なんてどうするつもりだったんですか?」

一方惚れ薬が手に入らないと理解したハルナは舌打ちして残念がるも、夕映やのどかはそんなハルナに呆れた表情をしつつも少し不安そうに見つめていた。


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