さて予期せぬ体験をした木乃香達であるが、この日は夕食にと魔法料理を作ることになっていた。

本来はもっと早く作るはずだったのだが坂本夫妻が来たりして延期になり今日になっている。


「魔法料理って言ってもそんなに特別な全く新しい味の料理とかじゃないぞ。」

流石に魔法料理はあまり人目に触れさせられないのでこの日は店を少し早く終わらせての夕食となるが、新しい魔法が見れるとのことで調理前から厨房には少女達が集まっていた。

木乃香達・美砂達・あやか達は元より日頃はこの時間帯には店に居ないはずのエヴァとチャチャゼロですらも魔法料理の調理過程が見れるならばと午後から店に残ってる。

結果として多くの少女達に見守られながらの調理となる横島は少し困った表情を見せながらなの調理となった。


「見てると意外に簡単そうなのですが。 実際魔法としてはどうなんでしょう？」

「あれは私も初めて見るがこの世界では失われたルーン文字を使った魔法だろう。 お前達が習ってるのはラテン語を用いた魔法だ。 単純に難易度だけで言ってもお前達が習ってる魔法と比べたらレベルの桁が違う。」

それは一言でいえば通常の調理に魔法を使うだけなので一見するとあまり難しそうには見えない。

ただ見ただけと言うならば魔法自体が杖を持ち呪文を唱えるだけなので難しそうには見えないのが現状なのだ。

いつもならばこんな時説明してくれる高畑や刀子が居ないことで、少女達の視線はなんとなく唯一の魔法使いであるエヴァに向いている。

エヴァは多少面倒そうな表情をするも、仕方ないなと言わんばかりに説明をし始めた。


「そもそも魔法とは科学ではない独自の法則に従い目的の現象を実現する技術なのだ。 極論を言えばどんな言語や文字でもその言語や文字に合った法則さえ見つければ可能なはずなのだ。 まあ本当にそれが出来れば人は神になれるだろうがな。」

横島が魔法料理に使う魔法は元の世界で魔鈴が使っていた魔法の一種であり、正直この世界にはない系統の魔法である。

ただ基本的な世界の構成には極端な違いがないので、全く未知の技術でもなければ根本的な技術に大きな違いがある訳ではない。

もちろん世界の構成にも些細な違いはあるし、歴史の積み重ねの違いにより発達した技術の方向性も違う。

加えて魔法料理は魔鈴が独自に確立した技術なので、ただの魔法ではなく現代の知識や技術も加わっていてほぼオリジナルに近いものであったが。

エヴァは魔法の基本的な知識もほとんどない少女達に根本的な理論というか話をしていくが、少女達はやはり横島が異世界の人なのだと改めて感じた以外は正直具体的な難易度なんかはよく解らなかった。


「そんな難しく考えんでもいいだろうに。 魔法料理は食材や料理が持つ力や可能性を引き出すだけなんだよ。 全く別の効果を作り出す訳じゃないしな。」

なんとなく横島が凄いというか普通じゃないのは理解した少女達が見守る中で調理は続くが、横島は一応簡単に魔法の効果を説明しながらの調理になる。

ただ現実問題として魔力や魔法を感じることすらまだ出来ない少女達にとって魔法料理を作る光景は、時々妙な呪文を唱えて食材や料理が光るくらいであった。

まあそれでも魔法料理は少女達が習ってる魔法と違い役に立ちそうなのでそれなりに興味はあったが。


「って言うか誰も指摘しないけどその人形も生きてたんだね。」

「ちゃちゃぜろっていうんだよ。 おともだちなの！」

ちなみに小難しい話にイマイチ興味がなかった明日菜は、さも当然のように居るチャチャゼロを見てまた不思議な生き物が居たと興味深げに見ていた。

チャチャゼロに関してはタマモが散歩時に持ち歩いていた姿を見た者は多いが、まさかその人形が生きていてエヴァの関係者だとは当然ながら誰も知らなかったのだ。

友達だとみんなにチャチャゼロを紹介するタマモであるが、ハニワが生きてるんだから人形が生きていても不思議はないかとあまり驚かれることもなく流されることになる。