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その二

修学旅行よりしばらくしたある日の深夜、横島と魔鈴は緊急にカオスに呼ばれていた


「とうとう犬飼が動くぞ!」

カオスの言葉に横島と魔鈴の表情が強張る

それは横島が修学旅行に行った頃から、マリアが24時間犬飼の行動を監視していたのだ


「わかった。 俺とめぐみで行く。 八房が相手だとカオスとマリアじゃ相性が悪いからな。 奴が八房で人を切る前に決着を付けて来る」

気合いの入った表情で草薙の剣を握り締める横島

この剣と横島の力があれば八房が相手でも圧倒的に倒せるだろう


「行きましょう忠夫さん」

魔鈴は杖を持ち横島に掴まり、そのまま二人は文珠で転移して行った



その頃、人狼の里では犬飼ポチが村の奥の社に封印されている八房を手に入れようとしていた


「これさえあれば、狼王に… 人間どもを滅ぼして狼族の自由と野生を取り戻す!!」

夢や野望に燃えるその瞳は、もう勝利を確信したようである

社にかけられた封印を強引に破った犬飼は、無造作に八房をその手に納めた


そして手に入れた八房をゆっくり鞘から刀を抜くと、凄まじいパワーが犬飼には感じられる


「アハハハッ!! 俺は狼族の新しき神になるのだ!」

高らかに笑い声をあげた犬飼は、最早この場所に用は無いと言わんばかりの表情で里から出ていく



犬飼が高笑いをしている時、ある男が目を覚ましていた

「誰だ、夜中に騒いでいるのは…」

彼の名は犬塚ジロウ

隣にはまだ幼い子供が眠っいる

そう、この子供がシロであった

シロの父ジロウは、妙な胸騒ぎを覚えて家を出て村を見回りに行く



一方八房を手にした犬飼は早々に人狼の里の結界を突破していた

「さて、人間の街はどっちだ? ゆっくり狩りを楽しむとするか」

不敵に微笑む犬飼だが、何か視線を感じ後ろを振り向く


「さすがは人狼か… 気配は消してたつもりだけどな」

暗い森の中にその声は響き渡る

雲の隙間から月明かりに照らされて犬飼が見た者は二人の人間であった


「何者だ! 何故ここに居る!」

さすがの犬飼も動揺が隠せない

八房を手に入れて浮かれた気持ちはあったが、人間相手にこんな間近まで接近を許すなど有り得ないのだ

第一この場所は人狼の里の結界の手前で、人間が来る場所じゃない


「悪いな… 何も答えてやれん。 ただ、その刀は渡してもらう」

横島はそう告げると、ゆっくり草薙の剣を抜く

青白くうっすら光るその刀身に、犬飼の感覚は警戒を鳴らす


「貴様は霊能者か!」

八房に負けないほど危険な感じのする刀に犬飼は八房を抜いて構える


「止めて下さい。 今なら後戻り出来ます。 あなたの目指す先には何も残りません」

今にも戦いが始まろうとする時、魔鈴は静かに語りかけた


説得の聞く相手では無いのは魔鈴もよくわかっている

犬飼の瞳には野望や復讐など黒い感情で満ちているのだから

しかし…、それでも魔鈴は説得をしたかった


「何者かは知らんが、八房のイケニエになってもらう」

魔鈴の言葉を無視した犬飼は、横島と魔鈴に切り掛かろうと刀を振り上げた!



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