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平和な日常~冬~5

「今日は寒いな。 雪が降るかもしれないってさ。」

「ねこさんたちをひなんさせなきゃ!」

翌日は朝から今年一番と言えるほど冷え込んでいた。

北日本の寒気が関東まで南下したようで午後には雪が降るとの予報である。

タマモはテレビで見る北国のようにたくさん積もると思ってるのか、庭の野良猫達を台風の時のように避難させるんだと張り切っていた。

横島はタマモががっかりしないように積もらないと教えてはいるが、猫はこたつで丸くなるという歌にもあるように寒さで風邪を引いたらダメだからと二階に避難させるつもりのようだ。


「今日は坂本さんが来るんだよな。 電車は大丈夫かな? 一応泊まれるようにしとくか。」

さてそんなこの日は午後には坂本夫妻が次回の麻帆良亭の限定復活の話をする為に店に来る予定になっている。

これまたタマモが楽しみにしていて、坂本夫妻に年賀状を出した際にいつ店に来るのとメーセージを添えたことが今日の予定に繋がっていた。

実は次回の限定復活に関しては横島としては催促をする訳にもいかなかったし、一方の坂本夫妻も遠慮があって本当にいいのか判断に迷っていたのが本音であった。

結局はタマモの年賀状に近々行くからと坂本夫妻が返事を出したことで、早い段階で話をする機会に恵まれている。



「そうか、横島君から聞いたか。」

一方この日の午前中には授業の合間を縫って高畑が近右衛門の元を訪れていた。

前日のうちに横島からも連絡を受けているが、近右衛門はそれを表情には出さずに高畑の話を聞いている。


「正直驚きました。」

「そうじゃの。 早ければ九年ほどでとなるとワシでさえ生きとる可能性が高いからのう。 ただ今のうちに分かって良かったとワシは思っとるよ。 最低限備える時間はあるからの。」

横島や刀子が少し心配した高畑であるが、その表情は落ち着いたものであり近右衛門を安堵させた。

衝撃の事実ではあるが他の魔法協会や国より先に備えることが出来るのは大きなアドバンテージになる。

高畑としても横島の話を前向きに受け止めたようで、近右衛門はその成長が何より嬉しかった。


「学園長、僕は魔法世界の崩壊した場合に備えて一人でも多くの人々を救う準備をしたいと思ってます。」

「君の気持ちは理解するが、それも君が考えてる以上に難しいぞ。 流石に魔法世界の崩壊を阻止したいと言われるよりはマシじゃが。」

流石に魔法世界の崩壊を阻止したいとは言わない高畑に近右衛門は心底ホッとするも、高畑が願う崩壊した場合に人々を救うことも決して簡単ではない。

ただ近右衛門は内心では高畑の考えに大筋では賛成でもある。

近右衛門個人としても救えるなら救いたいし、魔法協会としても少数でいいので救った実績は欲しいとも思う。

将来的に魔法世界の崩壊の責任問題なんかが議論された場合には少数でも救った実績は役に立つと考えていた。

尤もあまり大量に救うと関東魔法協会の手に負えなくなるのは明らかであり、ほぼ単一民族の国家である日本にメガロメセンブリア人が大量に移住でもすれば必ず問題になるのは考えなくても分かることだが。

それとメガロメセンブリア人の気質を考えると将来的に独立や国家再建など言い出す可能性も高く、下手に大量に助けると有史以来の西洋人の魔法使いと非魔法使いの泥沼の争いに巻き込まれる可能性も十分にある。

加えて問題なのは魔法世界の真相や限界を自分達が早くから知ってると気付かれるのはマズイということがあった。

先の世界情勢は分からないし一概に言える問題ではないが、将来的に問題になりそうな芽は摘んでおかねばならない。


「分かっています。」

「軽はずみな行動はせんでくれよ。 下手に情報が漏れると地球で魔法使いの排斥に繋がる可能性もあるし、横島君の秘密が漏れて居なくなられると明日菜君を守れなくなるからの。」

結局この件は自分も相談に乗るので軽はずみな行動はしないようにと高畑に強く釘をさすことになる。

高畑の考えを否定はしないが事は慎重に進めねばならなく、ネギの一件の二の舞だけは御免だった。
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