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平和な日常~冬~5

「それとこれも教えときますけど、俺の個人的な試算だと魔法世界は早ければ後九年で消滅します。 まあ上手く延命すりゃ百年は持ちそうですけど。」

結局明日菜の能力封印は高畑も賛成するが、横島はもう一つ高畑に話すべきことがあると魔法世界の残りの時間を教えていた。

それは高畑にとっても青天の霹靂と言えるほどショックな話である。


「まさか……」

「世界を構成する魔力の絶対量がすでに足りないんですよ。 加えて魔法世界は実は地球と繋ぐゲートから地球の魔力を密かに持っていってるんで下手に延命すると地球も魔力不足気味になりますけど。 地球側の気候なんかの異常気象の一因は魔法世界が魔力を持ってくからでもありますし。 現状のままで延命すると今後は地球側の環境が悪化します。 ただでさえ自然破壊なんかで近年は地球側の魔力が減少傾向ですから。」

横島は淡々と魔法世界の限界と延命した場合のリスクや影響を語るが、高畑はどうも延命した場合のリスクは知らなかったらしく顔色を真っ青にしていた。

魔法世界が地球側の魔力を持っていってる件はメガロ上層部くらいしか知らないことで、地球側では多分横島が教えた近右衛門達しか知らないことである。

というか魔力泥棒の件とその影響が地球側に知られると最低でもゲートの破壊が行われるか最悪は戦争になるのでひた隠しにしてきたのだ。

実は創造主が魔法世界を創った時から魔法世界を創生したエネルギーとして使われていたのは地球の魔力であり、元々魔法世界の母体となった火星には魔力なんてろくにないので地球からエネルギーを持っていって創ったものであった。


「つまり安易に延命もできないということか?」

「メセンブリアは姫御子を手に入れたら魔法世界の維持に不要な魔法世界人を消すつもりでしたけどね。 世界の維持に不要な生態系を消すだけでかなり魔力の節約になりますから。 多分それだけで数百年は時間が稼げますし。」

顔を真っ青にしたままの高畑に横島はこの際だからとメガロメセンブリアが明日菜を探していた理由まで暴露するも、高畑は最早何を言っていいのか分からずに無言のまま考え込んでしまう。


「そもそも魔法世界は何の為に造られたの?」

「それは流石に不明っすね。 創造主って奴にしか分からないと思います。 ただメガロメセンブリアの祖先は元々は地球からの難民なんで、同時のウェスペルタティア王が迫害されていた彼らを助けるために魔法世界に入れたらしいですけど。」

高畑が固まったように無言になったので刀子はふとそもそもの問題として魔法世界は何の為に造られたのかと尋ねるも、それは横島でさえも明確な答えを知らなかった。

普通に考えるとアシュタロスのように天地創造を目指したのかそれともただ魔法を極めようとした可能性が高いが真相は不明であり、そもそもこの手のマッドが付くような存在は一般人の理屈では理解できない理由である可能性もあるため元々魔法世界が何の為に造られたのか横島はあまり気にしてない。


「なんか軒を貸して母屋を取られるって言葉そのものな感じね。 まあ歴史にはよくあることだけど。」

「メガロメセンブリアも当初は地球側の同胞の保護と支援が目的の組織だったようですし、最初は立派な人々の集まりだったようですよ。 代を重ねる毎に劣化したみたいですけど。」

どうも刀子は魔法世界の歴史をあまり知らないようで横島の話を興味深げに聞いていたが、よくある歴史と変わらない印象しかないようだ。

歴史を見れば下剋上はさほど珍しくはないし、国家にしろ組織にしろ腐敗や劣化しないものはないのだから。

その後高畑が苦悩したまま帰っていくと刀子は高畑が心変わりして魔法世界側に立場を変えるのではと不安に感じたようだが、横島はそれはないだろうと思いつつも近右衛門に連絡しておくことにする。
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