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平和な日常~冬~5

「やっぱ他の餃子と一味違うのよね。」

「バカうま!」

木乃香に魔法料理を作る約束をした後、横島達はすぐに夕食の時間となる。

冷めないうちにと熱々の餃子を頬張る少女達だが、モチモチした皮にパリッとした香ばしい焼き面が日本の焼き餃子の美味しさの秘訣の一つであり他の餃子とは皮からして一味違うと唸る。

餃子と言えば中華料理からラーメン屋まで幅広くメニューにあるが、麻帆良で一般的に有名なのはやはり超包子の餃子であろう。

中華まん同様に持ち帰り販売もしてるので学校や職場帰りに買って帰り、寮や自宅で温め直して食べたことがある人は麻帆良では多い。

そんな超包子と比べても横島の餃子は一味違うと感じるが、それに関しては少女達が横島の料理の味に慣れたこともあるだろう。

家庭の味と言えるほどに食べなれた美味しさがあるし、加えて横島も少女達の好みを熟知してるからだと言える。


「こういう餃子もいいわね。」

そしてこの日は雪広さやかが初めて横島の店に来ていてせっかくだからと夕食を食べていたのだが、変わり種餃子を物珍しげに食べていた。

家庭料理とすれば変わり種餃子はさほど珍しくはないが、それを商売として食べさせる店は意外に少ない。

雪広姉妹などは点心専門店で変わり種餃子を食べたこともあるようではあるが、横島の変わり種餃子はそんな専門店の変わり種餃子よりもよりジャンクフードに近い餡になっている。

手作りの皮と焼き方は本格的なのだが餡の中身があまりお店では見られないようなジャンクフードというか普通の家庭的な物なのだ。

流石に雪広家の夕食にはこんな餃子は出てこないらしく逆に珍しいようであった。



その後夕食を終えて少女達が帰ると入れ違いで刀子と高畑が店にやってくる。

二人は新学期の準備などで忙しく少し遅い夕食を横島の店でとるが、高畑は少し冴えない表情で横島に一通の手紙を見せる。


「へ~、この人がクルト・ゲーデルっすか。」

それはこの世界の西洋魔法使いが一般的に使う記録魔法を用いた手紙であった。

ビデオカメラのように魔法で言いたいことを手紙に記録して送ると立体映像のように再生して見る物であるが、横島と刀子が驚いたのはその中身であり手紙の送り主はクルト・ゲーデルなのだ。


「随分と独善的な人ね。」

横島も刀子もクルトの存在は資料程度でしか知らなく興味深げに手紙を見ているが、クルトは世界の危機が迫ってると訴え高畑に力を貸して欲しいと語る手紙である。

今動かねば全てが無駄になるとかナギの努力を無駄にしない為にとか高畑の心に訴えかけるような内容ではあるものの、刀子はそれを独善的だと冷静な表情で言い切っていた。


「人のこと言えないけど、クルトにとってはやっぱりナギやアリカ様は特別なんだよ。 それとクルトは完全なる世界の情報を隠していた黒幕にされてるから政治的に終わっていてね。 どうしても復権したいんだろう。」

そもそも何で自分達にこんな手紙を見せるのかと横島は少し不思議そうだが、高畑はすでにこの手紙を近右衛門にも見せていて今後クルトが暴走する可能性を伝えたらしい。

その流れで明日菜の秘密を知る刀子と横島にも伝えて警戒して欲しいと言うが、横島は少し迷う表情を見せる。


「あの、高畑先生。 言いにくいんですけど、完全なる世界のってかアーウェルンクスの情報を世界に暴露したの実は俺なんですよね。 関西に潜入されるとめんどくさくなりそうだったんで。」

高畑としては完全なる世界ばかりではなくクルトも警戒しなければならないと教えねばならないと思ったのだろうが、横島はそもそも完全なる世界の一件を自分がやったと高畑に教えて居なかった事を思い出し言いにくそうに話していた。

その突然の真相の告白に高畑は唖然としてしまい刀子は少し困ったような表情で見守る。

正直高畑にその件を話して大丈夫なのか刀子は少し不安なのだが、高畑自身もある程度覚悟を決めてるだけにいつまでも隠すのも良くはない。
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