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平和な日常~冬~5

それから二日ほど過ぎると麻帆良学園は三学期を迎えていた。

ここ二日の横島は恒例となりつつある冬休みの宿題を片付ける常連の学生を手伝ったりと店は賑わい忙しく働いている。

それと冬休みの最後にと考えていた旅行は異空間アジトへ行ったことで結局取り止めになってしまった。

少女達とすればあれが実質旅行だったようなもので、短期間にまた行くのはお金がもったいないということになったようだ。

唯一懸念したのはタマモと約束したことだが、タマモもあの異空間アジトでの滞在をハニワ兵の故郷への旅行だと考えていたようで特に反対も残念がることもなかったようである。

次に魔法については店を閉めた後で一度だけ横島と刀子が見守る中で二時間ほど練習したが、早々成果が出る訳でもなく今後も折を見て練習することになった。



「学校行かんのか?」

そんな始業式のこの日、朝食目当ての客が居なくなった午前九時半頃になるとエヴァがチャチャゼロを連れて店にやって来ていた。

店の一番奥の窓際に座った二人に横島は注文された飲み物とスイーツを持っていくが、店内から一応死角になる場所に座ったチャチャゼロは割りと堂々とスイーツを頬張っている。


「私が今更学校に行ってなんになる。」

「それもそうか。」

異空間アジトから帰って来て初めて顔を出しに来たエヴァだが、やはり彼女は騒がしいのはあまり好まないし学校にも興味がないようだ。

横島としては木乃香達も居ることだしエヴァもそれなりに学校を楽しめるのではとも思うが、本人が行く気がないのを行かせるつもりもないらしい。


「ナギが何を考えてあんなふざけた呪いを使ったのかはなんとなく分かるが、ヤツは人間の側の問題をまるで考えなかったからな。」

「まあな。 どっちかって言うと人間の側が受け入れないだろうな。 そのくらいは俺にも分かるよ。」

現状のエヴァは特に人間に対して恨む気もないようだが自分から歩み寄る気もないのだろう。

ナギとしてはエヴァを光の道へと考えたのは間違いはないのだろうが、自分は吸血鬼を気にしないからと他の人間がどう思うかまるで考えなかったことが失敗だと言えた。

結局エヴァが光の道を歩んでも彼女を受け止める個人は居ても受け止める社会は今のところ存在しないのだ。

まあエヴァへの対応は完全なる世界との戦いに巻き込まない為でもあったので、一応目的は果たしたとも言えるが。


「貴様がその辺りを理解してるのは少し意外だな。」

「俺もそれなりにいろいろ経験したからな。 それに友達のバンパイアハーフが昔言ってたよ。 自分が人の社会で生きていくには誰よりもいい人でいるしかないってさ。 同じ人間同士でさえ差別し争うのに人外が社会的に対等に見られることは当分あり得ないだろうって。」

タマモやさよの扱いもありエヴァは横島が人間の闇とも言える部分を理解していたことに少し驚きの表情を見せるも、横島は下手な嘘が必要なくなったからか本音をそのまま語っていた。

正直なところ横島自身もかつてのアシュタロス戦を境に価値観は変わっていたし、言い方は悪いが人間を見限っていたとも言える。

そして横島がルシオラの魂の覚醒により人間でなくなった後、横島はピートと本音で話して忠告されたことがあった。

人間でなくなった横島がかつてのように自由に生きれば令子達はともかく、いずれ人間そのものと衝突するだろうから気を付けた方がいいと言われたのだ。

実際横島は人間でなくなった事を境に小竜姫の元に身を寄せる結果となり、令子達のように以前から付き合いがある人間以外と関わる機会は持たなくなったので問題にはならなかったが。


「異世界も人間は同じということか。」

「どうなんだろうな。 ただ要領よく生きる必要はあるんだろうよ。 まあ俺は最悪の時は向こうに引きこもるなり別の世界に逃げるなり出来るから気楽だけどな。」

途中お客さんが来て話は途切れることはあったが、エヴァは異世界でも人間と人外の関係は基本的に変わらないと知ると何とも言えない様子であった。

ただ同時に横島が上手く生きてることはほんの少し羨ましいとも心の底では感じてもいた。

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