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その二

横島達が去った後、雅也は一人部屋で笑みを浮かべていた


「予想通り面白い人でしたね」

小さくつぶやき彼が手に取ったのは、古い古文書と横島と魔鈴を調べた調査報告書である


「約束は果たしました。 後はあなた達次第ですよ。 横島さん…」

静かな部屋に雅也の言葉が響くが、それに答える者は居なかった



一方、土御門家を後にした横島達は昼食と先ほどの話の説明を兼ねて、某高級懐石料理の店に入っていた


「あの… 横島さん、ノスフェラトゥの事なんですが…」

疑問だけが残ったピート達はやはり詳しく聞きたいようだ


横島と魔鈴はそんなピート達を見て、少し困ったように笑みを浮かべる

本来は決して他言する話では無い

横島の文珠、令子の時間移動はどちらも秘匿したい能力であるのだが…


「仕方ないな… ただし誰にも言うなよ。 エミさんや神父にもな」

横島は話す前に釘を刺し、少しため息をはいてゆっくりと語り出す

歴史の裏側にある隠された真実を


そのあまりに歴史と違う事実にピートのみならず、愛子や加奈も驚きの連続であった


「明智光秀が日本を救った英雄だったなんて…」

愛子は話を聞いた今でも信じられない思いである

教科書にある歴史が正しいと信じていた加奈やタイガーも同じだが


「歴史とは所詮は勝者が好きに記した物。 そして敗者の言い分は伝わらないことが多いのです。 特にオカルトの歴史は隠匿されるのが常でした。 織田信長が魔族だったと言う事実は封印されたのでしょう。 信長の後に天下を納めた秀吉や家康にとっては、決して明かせない事実ですから…」

少し悲しそうな魔鈴は、あくまでも推測だと前置きした上で、真実が隠された理由を語っていた


「言えるはずが無いよ。 自分が仕えてた人が魔族だったなんてな… そして、ノスフェラトゥは信長として殺された。 本能寺以後の秀吉の行動を見ても、明らかに秀吉は信長の正体を知ってたんだろうな。 多分、土御門家辺りとも繋がってたんだろうさ。 結果的に、光秀一人に泥を被せて後の連中は闇に消えた。 真実はそんなとこだろうな」

魔鈴の話を続けるように語る横島だが、相変わらず不機嫌そうである


「なんか… みんな勝手よね。 正直者は馬鹿を見るって言う典型的なパターンね」

話を聞き、加奈はなんか納得がいかない


「まあ、良く聞く話ですよ。 歴史に名を残す支配者は、正直者とは無縁な人達が多いですから…」

一番冷静なのはピートのようである

長い年月を生きて来たピートは、そんな歴史の裏側を一番見てきたのかもしれない


「光秀は知ってたんだろうな… 全部…」

今になってみれば光秀は、全て知った上で汚れ役を引き受けたのだろうと横島は思った

命も家族や仲間も名誉も捨てる覚悟で国を守ったのだろう



しかし…

横島と魔鈴は、それを利用した連中に対して怒りを隠しきれないでいた

その怒りは横島の過去と関係するのだろう


そう…

未来でのアシュタロス戦の時に、似ている部分があるからかもしれない

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