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平和な日常~冬~5

さて昼食を終えた後になると少女達はいよいよ魔法を習うことになる。

場所はホテルの中庭に出て習うのだが横島は近右衛門達大人組やエヴァと一緒に見学するらしい。


「本当にここは何でもあるのね。」

「杖はそっちの世界の魔法の研究用に確保した物でそんだけしかないんっすよ。 事前に言ってくれればもっと揃えたんですけどね。」

この日は急遽魔法を習うことになったので西洋魔法を使うのに一般的に必要な魔法発動体である杖は用意してなく、土偶羅が魔法の研究用に確保した杖が十本ほどあったので持ってきて貰っている。

二十センチほどの細い杖には星や月の発動体が付いていてまるで子供のおもちゃのような杖であり、少女達はメルヘンっぽい杖に思わず笑ってしまっていた。


「西洋魔法を教えるんっすか?」

「基礎的な魔法の習得は魔法体系が確立されている西洋魔法の方が難易度が低いからのう。 東洋魔法は魔法体系も指導方法も千差万別じゃ。 気や魔力を理解させるには西洋魔法の方が簡単でな。」

魔法と一言で言っても様々あるが今回少女達に教えるのは西洋魔法の基礎らしい。

横島としては西洋魔法と東洋魔法を平行するのかと思っていたが、近右衛門いわく基礎的な魔法に限れば西洋魔法の方が習得は簡単らしい。

指導者は刀子がするようで彼女は元々が神鳴流剣士なので陰陽術などの東洋魔法を主に使えるようだが、西洋魔法も基礎的な魔法を指導する程度の簡単な魔法は使えるようだ。

尤も近右衛門や詠春の前で少女達に指導するなんて、刀子からすればまるで罰ゲームのようだと内心では愚痴っているが。


「……もうちょっと、なんか方法はないんっすか?」

少女達はさっそく魔法の説明を受けると練習を始めるが、それは気や魔力の概念を漠然と説明してただ杖を持ち始動キーと呪文を唱えるだけとのあまりにシンプルな方法だった。

横島のイメージでは魔法技術が発達している世界なだけにもう少し近代的な指導法があるのかと考えていたようだが、指導法に限れば前の世界の霊能者育成法と大差ない。

元々霊力も気も魔力も根源は同じなので不思議はないのだが。


「これが一番シンプルで簡単なんじゃよ。 東洋魔法じゃと肉体と精神の修行から入るからのう。 それとも君なら他に方法があるのか?」

「ないこともないですよ。 ただね……。」

このシンプルな練習を数ヵ月続ければ魔法を使えるようになると聞くと、早くもテンションが落ちて挫折しそうな者も居る。

火種を灯す魔法に数ヵ月も単純な練習の繰り返しは少々面倒だと考える者も居るのだ。

ただこれでも本格的な魔法の修行よりはかなり簡単で楽なようで、西洋魔法が普及した原因らしい。


「あんまり簡単に使えるようにするのもどうかと。」

そんな呪文を唱える声が繰り返し聞こえる中で横島は近右衛門達と魔法の習得方法について話していくが、横島が小竜姫の知識や能力で教えると習得は簡単になるがそれでいいのか横島には不安もあった。

ちなみにさよとタマモも一緒に魔法を練習していて、タマモはよほど楽しいのか走り回って杖を振り回している。


「うむ、ならばしばらくはこのままの方がいいかもしれんのう。 別に焦る必要はないじゃろうて。」

横島が何を不安に感じてるのか理解した近右衛門はしばし考え込むが、しばらくは横島が簡単に教えない方がいいだろうと結論付けていた。

実際麻帆良での魔法使いの子供は、基礎的な魔法を習得するまでの数ヵ月間で苦労を経験して魔法関連の知識などを学ぶ重要な期間になっている。

なんとなく横島ならばすぐに魔法を使えるようにしてしまう気がした近右衛門は、あまりに簡単に教えるとそれらの経験を積めなくなるので問題かもしれないと感じていた。

ただエヴァだけは横島のいう別の方法が気になるらしく、少し考え込む素振りをしながら横島と近右衛門の話に耳を傾けていたが。
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