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その二

光秀の消えた部屋は静寂に包まれており

ピートや愛子達は事情がわからないが、横島と魔鈴のしんみりした空気を静かに見つめている


「明智光秀公と会えるとは…、面白い経験をさせて頂きました」

静寂を破ったのは雅也だった

「お二人が倒したノスフェラトゥを退治する計画を裏で練っていたのは、我が家の祖先です。 最悪の場合は本能寺ごと封印する手筈でした」

雅也が語りだした歴史の真実に、横島と魔鈴は複雑そうな表情で聞いていた


「土御門家は代々、時の支配者には従って来ました。 あくまで霊的防衛に限定して、政治には関わらないことで長い年月生き残って来ました」

お茶を飲み、少し間を開けた雅也は光秀とノスフェラトゥにに関する真実を語ってゆく


「しかし、問題が起きた。 この国を支配しようとしていたのは、人間では無かったのです」

その言葉にピート、タイガー、愛子、加奈は表情が変わる


「後ろの皆さんにもわかるように話すと、かつて織田信長と言う武将がおりました。 しかし、ノスフェラトゥと言う魔族が、いつの間にか織田信長にすり変わっていたのです」
 
ピートや愛子達に雅也は説明をするが、あまりに現実離れした話に半信半疑であった


「ノスフェラトゥは自分の敵になりそうな存在は容赦無く殺しました。 有名な比叡山焼き討ちや、長島の一向一揆討伐などはその一例です。 ノスフェラトゥは各地の宗派や寺社仏閣などを破壊していきました」

ゆっくりとしたペースで雅也の話は続いていく


GSの居ない当時の日本を霊的に守っていたのは、各地の寺社仏閣などの僧侶達がほとんどであった

陰陽師は居るが、数は少なく地方にはほとんど居ない

そんな時代にノスフェラトゥは様々な理由を付けて、寺社仏閣を滅ぼして行った


本来は政治に関わらない土御門家も、この事態だけは無視することが出来なく

当時、同じくノスフェラトゥの正体に気付き退治しようとしていた明智光秀と共闘したのだった



「つまり光秀を利用したと…」

いつの間にか険しい表情なっていた横島は、雅也を睨むように見ていた


「まあ、結果だけ見ればそうかもしれませんね。 私は伝承が記された記録でしか知りませんし、真実は知りません」

横島の視線に気付きつつも、雅也は表情をを変えずに涼しげな表情のままだ


今語られた話や一般的に明らかになっている歴史

そして横島が過去で見てきたことを合わせると、光秀は利用されたように横島には思えた


「お話が終わりなら私達は帰らせて頂きますが、よろしいですか?」

一見いつもと変わらぬ表情だが、明らかに言葉の冷たい魔鈴は静かに雅也を見つめる


「ええ、光秀公との約束は確かに果たしました。 光秀公の残した霊具が他にもありますので、それもお持ち帰り下さい。 たいしたおもてなしもせずにすいません」

最後まで涼しげな笑顔のまま雅也は部屋を後にする

雅也が退室した後、家の者が封印されている箱を運んで来た


横島達はその箱を持ち土御門家を後にしてゆく



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