このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

平和な日常~冬~5

「凄いわ。」

一方近右衛門達は朝から異空間アジト内の施設を視察していたが、広大な敷地に整然と並ぶ完成された魔法世界用の空中艦に唖然としていた。

短期間に量産された空中艦の数はこの場にあるだけで三十機にも及ぶ。


「ここにあるのは魔法世界仕様の空中艦だ。 防御シールドが脆弱なので自前で運用したくはないが第三者に提供するにはちょうどいい。」

ここにある空中艦は主に輸出というか第三者への提供用として保管してる物だった。

一応現状の魔法世界の空中艦と互角に戦えるだけの性能にはしたが、防御シールドが脆弱で戦略級魔法やジャック・ラカンの攻撃に耐えられない欠点もある。

ちなみにエンジンや航行システムも完全に魔法世界仕様なので異空間アジトにおいても特殊な結界等で環境を魔法世界と同じくしないと使えない。

この空中艦に関しては一部の魔法世界でしか手に入らない物質が製造には必要で、それを異空間アジトで無から造り出すのにかなりのコストが掛かっているなんて事情もあるが。

ただ自前の技術は一切使ってないので、万が一誰かに取られても全然惜しくなく第三者に提供するにはちょうどよかった。


「技術取得と蓄積の為には確かにデータだけだと足りないだろうしね。」

土偶羅いわく自前で運用する気の無い空中艦だが、魔法世界の技術蓄積の為にも一度製造した方がいいとの事情もない訳ではない。

雪広家や那波家の面々はそこまで瞬時に見抜いており、万が一使わなくてもそれなりに役に立つのだろうと理解している。


「介入か。 絶対に避けたいがのう。」

「それはワシと横島も同じだ。 ただ連合が暴走した時に打てる手は一つでも増やしたい。」

その一方で近右衛門は魔法世界への介入は絶対に避けたいと強い口調で愚痴を溢す。

まあ介入を避けたいのは横島も土偶羅も同じだが、万が一メガロが暴走した際への対策は必要不可欠だった。


少し話が逸れるが横島が逆転号で魔法世界に殴り込みをなどという、過去のアシュタロス戦でのアシュタロスような展開は土偶羅としては下策中の下策でしかない。

そもそもあの戦いにおいてアシュタロスは天地創造ではなく自らが滅ぶための計画としてあの反乱を起こしたのであり、メフィストの生まれ変わりである令子と高嶋の生まれ変わりである横島を試したとも利用したともいえる。

自らが滅ぶためとはいえ絶対に神魔だけには踏みにじられたくないとの想いから、アシュタロスが令子と横島を選んだと言うのがアシュタロス戦のアシュタロス側の隠された真相だった。


さて話は戻り実際問題として土偶羅が仮想敵として考えるメガロメセンブリアはメセンブリーナ連合の盟主として魔法世界最大の軍事力を保持するが、ヘラス帝国やアリアドネーを除いても潜在的な敵対勢力はそれなりにある。

明日菜の祖国でもあるウェスペルタティア王国にも独立派は数少ないながら存在していて、秘密結社完全なる世界の残存勢力との汚名を着せられ今も弾圧され続けていた。

その他にもメセンブリーナ連合内には独立を願う勢力は数少ないながら存在していている。

現実問題として魔法世界に介入するには場合によってはそういった反メガロの勢力を味方に付けたいとの思惑があり、土偶羅は第三者に提供出来る兵器やマジックアイテムに食料などの物資も用意を始めていた。

昔からよくある手法ではあるが現地勢力をいかに分断し味方に付けるかは重要な問題だった。

まして自分達は魔法世界に深入りする気は更々無いので、万が一介入した際にも後始末やその後の問題を押し付ける現地勢力は必要である。


「仕方ないでしょうね。 力なき者は話し合いも出来ませんから。」

根本的に介入しない方向なのは皆同じだが、介入するかしないか分からない段階で本格的な介入の準備を進める土偶羅に詠春はなんとも言えない表情をしつつもその必要性は誰よりも理解していた。

かつてね赤き翼もそうだが個人の力では解決出来ない問題は確実にあり、話し合い一つでも力は必要なのだ。

まあぶっちゃけ金に糸目を付けずに準備を出来る土偶羅が少し羨ましくもあったが。

11/100ページ
スキ