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平和な日常~冬~4

昼食後は予定通り全員で映画館に行くが、そこは映画館の他にゲームセンターやボーリング場などが併設されたアミューズメント施設であった。

入り口には現在上映中の映画を知らせるポスターが貼られているが、一行が見に来たサムライマスターの映画の他にも八作品ほど上映していて中には麻帆良で夏に上映していた映画なんかもある。

映画館のフロアの雰囲気は麻帆良にある映画館と同じで映画の受付カウンターに飲み物や軽食提供をしているところなどは全く変わらない。


「こういうとこ来ると食べたくなるのよね。」

サムライマスターの映画は人気らしくかなりのハニワ兵達で賑わっているが、ポップコーンの匂いに釣られたのか少女達は軽食提供しているカウンターの前で足を止めた。

一番人気はやはりポップコーンらしく、シンプルな塩味からカレー味やキャラメル味など味のバリエーションが結構多い。

量も大きいのだとバケツサイズからあり、こちらも当然タダなのでほとんどの者は飲み物とポップコーンを求めている。


「映画などいつぶりかのう。」

「昔を思い出すわ。」

そんな中で随分久しぶりに映画館に来たようなのは近右衛門と千鶴子の二人であった。

同じ年代の中でもフットワークの軽い清十郎は割りと映画を見に行くらしいが、近右衛門達は息子や娘がまだ小学生だった頃以来らしく随分と久しぶりらしい。

一昔前の映画館とまるで違う雰囲気の映画館に驚きを隠せないようだった。


「お父様が映画になってるなんて思いもしなかったわ。」

「身近な人に凄い人が居たのですね。 こう言っては失礼ですが、普通の人に見えたのですが。」

そのまま映画開始十分前には座席に座ると映画が始まるのを今か今かと待ちわびていたが、やはり詠春の顔色はあまり良くなく昔の自分を美化した映画を娘や義理の父に娘の友人達と一緒に見ることは一種の罰ゲームにしか感じない様子だ。

一方の木乃香や夕映やのどかなどの図書館組は単純に身近な人の映画を楽しみにしていて、特に木乃香は父の知られざる過去が見られると期待がより一層膨らんでいる。

ちなみに詠春と友人であるあやかと千鶴の父親はそんな詠春や娘達を見てニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべていた。

生ける伝説と化してる詠春であるが、その実態を知っていればこれから見る映画は少女達とは別の楽しみ方があるのだろう。


「ねえ、このサウザンドマスターって何者?」

「その人が詠春さん達の中心人物らしいぞ。 英雄の中の英雄らしくって魔法界だと一番人気みたいだな。」

「えー、イケメンだけど子供じゃん! こっちのムキメキの方が強そう!」

そして横島はと言えばパンフレットを片手に映画の登場人物について周りに説明していた。

映画は若き詠春を中心にした物のようだが同時に主役級の扱いでパンフレットに載っているのは、もちろんナギ・スプリングフィールドことサウザンドマスターである。

その若さとイケメンの見た目から美砂達なんかは少し興奮気味に騒ぐが、客観的に見て正直強そうには見えないらしく同じ赤き翼の面々ではラカンが一番強そうだと盛り上がっていた。


「アスナさんどうしたのですか?」

「ううん、なんでもない。 なんかどっかで見たことがあるような……ないような……。」

「高畑先生のご友人ならば一緒に暮らしていた頃に高畑先生の昔の写真で見たことあるのではないですか?」

「うーん、そうなのかもしれない。」

次に若い頃の詠春や赤き翼のメンバーが載るパンフレットを見ていた明日菜は、何か引っ掛かるような感じがしたようで先程から首を傾げては考え込んでいる。

その姿に大人組は明日菜がまさか過去を思い出すのではと心配していたが、明日菜の様子を気にしたあやかが高畑の写真で見たのではと推測すると明日菜はそうだったかもしれないと一応納得していた。

正直明日菜もなんとなく引っ掛かるだけであり、あやかの推測があまりに自然だった為に過去を高畑の家で写真でも見たのかもしれないと考えるとそうだったかもしれないと納得したらしい。

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