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平和な日常~冬~4

「……私は貴女達が思ってるほど恵まれてないわよ。 横島君のことにしても私の気持ちだけで自由に出来る問題じゃないもの。 横島君の立場を考えると特にね。」

雪広姉妹はある程度理解してるようだが、他の少女達の羨ましそうな視線に刀子は少し複雑そうな表情を浮かべるとそれほど単純ではないと告げた。

木乃香の手前あえて言葉を濁したが二つの魔法協会の狭間に居る刀子は、正直苦労の割りに報われてないと常々思っている。

いっそ魔法も何も知らない家庭に生まれていたらと考えなくもない。

現状で刀子が少女達から羨ましがられるような状況なのは好意を持つ相手である横島が強大な力を持つが故に、間接的に守られてるようなものだと自覚している。


「魔法協会って恋愛も自由に出来ないの?」

「なんか嫌だね。」

一方刀子の予期せぬ本音を聞かされた少女達は途端に魔法協会に対する印象が悪化し始めていた。

秘密を守る大切さはなんとなく理解するが、二十一世紀の現代において恋愛も自由に出来ない組織など馬鹿じゃないのとすら思う者もいる。


「別にダメだっていう明確な規則はないわ。 それに貴女達は魔法協会に加わるわけじゃないから大丈夫よ。」

なんとなく魔法協会の嫌な面にテンションが下がり始める少女達であるが、刀子は自分と少女達では立場が違うから大丈夫だと言い切るが少女達からすると素直に喜べるはずがない。


「マスターは自由そうよね。」

「それは横島さんが自由に振る舞えるだけの力があるからでしょう。 結局のところ人が自分の意思を通すには少なからず力が必要ですからね。 葛葉先生も横島さんさえその気になればいけるのでは?」

「そうかもしれないし私はそれでもいいけど、貴女達はそれでいいの? こう言う言い方はどうかと思うけど、あんな男なかなか居るもんじゃないわよ。」

なんとなく重苦しい空気になる女性陣と対称的に横島は気楽で楽しそうにしていた。

ついさっきにはタマモが横島の元に行くと横島と千鶴とタマモは楽しそうに三人で遊んでいる。

そんな自由な横島に少女達はホッとしつつ横島が自由に振る舞えるのはそれだけ力があるからだと言い切る夕映は、相手が横島ならば刀子も自由に恋愛出来るのではと解決策のような意見を言うがそれには刀子が苦笑いを浮かべて逆にいいのかと問いかけてしまった。

美砂のように自覚している者も居れば木乃香達のようにまだ完全に自覚出来てない者もいる。

確かに大人である刀子にはすぐにでも横島にアタックしたい気持ちもあるが、だからと言って現状の横島と少女達の関係を壊したいとは思わないし壊せるものでもない。

それに横島は今後の麻帆良の鍵を握る存在だけに下手な行動で横島と少女達の関係を壊すと今度は近右衛門達に恨まれる可能性もない訳ではなかった。


「もう少し時間が必要だと思うわ。 横島君も貴女達も。 私はそれまで待つつもりよ。」

結局刀子の問いかけに明確な答えを出せる者は居なく、刀子自身も横島と少女達には今しばらくの時間が必要だと諭すように言い切る。

それまで待つと言い切った刀子は自分が時間が過ぎれば過ぎるほど不利になることを理解していても、その道を選ぶしか道はなかった。

そして少女達は刀子の大人の女としての覚悟に驚きながらも、そんな刀子故に横島が受け入れたのかもしれないとなんとなくだが思う。

ライバルでもあり味方でもある刀子が頼もしくもあり恐くも感じた少女達であった。

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