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平和な日常~冬~4

「結構広いですが、高いのではないですか?」

その後ホテルマンのハニワ兵に案内されて部屋は入るが、基本的に部屋は寝室の他にリビングとバスとトイレが付くごく普通の部屋であった。


「ここはこの規模が標準なんだよ。 人口密度なんてあってないようなもんだしな。 それとここはお金っていうか貨幣制度そのものがないから料金もない。」

それぞれに一旦部屋に荷物を置いた一同はなんとなく横島とタマモとさよの部屋に荷物を集まるが、ホテル代を気にする夕映に横島が何気なく語ったお金の話に一同は驚き不思議そうにする。

誰もが街があればお金が必要だと考えたようなのだが、実は異空間アジト内では貨幣制度そのものが存在しない。


「不思議か? 理由はいくつかあるけど一つはハニワ兵の人口に対して物が有り余ってること。 一つはハニワ兵は基本的にみんな仲間であり家族だってこと。 そしてこれが一番の理由なんだがそもそも俺がお金をあんまり好きじゃないってことかな。」

街があり住む者が居るのに貨幣制度が無くてよく社会が成立するなと感じる一同であるが、基本的に異空間アジトは物が有り余っている世界なのだ。

かつては人間界に大量の物資を送った異空間アジトも、今はその生産力が全く必要なく横島とハニワ兵達が楽しむ為と万が一の為にある程度継続させて生産してるに過ぎない。

従って欲しい物は普通に手には入るし、何より重要なのはハニワ兵には自我が与えられているが同時に協調性や仲間意識などもきちんと与えていることだろう。

現行のハニワ兵はドクターカオスが中心となり横島と改良したタイプであるが、そもそもの問題としてカオスも横島もハニワ兵を人間と同じくしようなどとは考えもしなかった。

自我や自由は与えたが人間のような際限ない欲は与えていなく自我と自制心のバランスは当然取っており、特に仲間内で争わないようにと協調性や仲間意識は強く教えている。

これに関しては横島はアシュタロス戦などで人間不信の部分もあったし、元々異空間アジトは三姉妹の為の遺産なので本来の継承者であったベスパとパピリオの意見もかなり反映されていた。

尤もハニワ兵の強化と自我の付与を計画したカオス自身もハニワ兵を人間のようにしたいとは思ってもいなかったようで、ハニワ兵の自我は土偶羅とマリアを参考にしている。


「いろいろと興味深いのう。 」

「人の社会に応用するのは無理っすよ。 ハニワ兵は人ほど欲深くないですし、基本的に土偶羅が管理してるから出来ることですから。」

そんなお金が存在しない世界について反応は様々で、少女達は食べ放題だとシンプルに喜ぶ者も居れば争いにならないことを不思議に思う者もいた。

一方の大人達は貨幣制度という表面的なことだけではなく、ハニワ兵社会を支える上での様々な仕組みに興味を示している。

先程の空飛ぶバスもあったようにハニワ兵社会を成立させているのが高度な技術や知識なのは明らかなのだから。


「あの、土偶羅というのはどなたですか?」

「そうそう、マスターのこと教えてくれるんじゃなかったの?」

結果として本当に自分達は不思議の国に来たのだなと誰もが感じるが、横島が大人達と話していた内容を静かに聞いていた夕映は管理している土偶羅という名前に興味を持つ。


「ああ、土偶羅ってのはここの管理してる奴でな。 ハニワ兵の親玉みたいな奴なんだよ。 何をどう説明すればいいのか。」

夕映の何気ない一言で少女達はようやく自分達は横島の過去を聞いていたのだと思い出し説明を求めるが、横島は何をどう説明するべきか普通に考え込んでしまう。

正直悩まなくてもいいので出来れば過去を一からそのまま話して欲しいと願う一同であるが流石にそこまで無神経なことを言える者はいない。
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