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平和な日常~冬~4

「そろそろ話を進めていいかの?」

横島に関しては相変わらず役に立ってなかったが、摩訶不思議な現象に様々な反応を見せる少女達に近右衛門はようやく話の本題に入ろうとしていた。


「先程から見せているのは俗にいう魔法じゃ。 一般の世間には隠されとるが世の中には魔法などの現代科学ではあり得ない力や存在が実在する。 君達にはこの現実をまずは受け止めて欲しい。」

随分と脱線してようやく魔法という存在を明かされた少女達であるが流石に嘘だと笑う者は居なかった。

実のところ半信半疑な部分がない訳ではないし、あまりに荒唐無稽な話なのですぐに信じるのは難しい。

ただ現実としてタネも仕掛けもない魔法を見せられてるだけに全く信じてない訳でもなく、どう受け止めるか定まってないということだろう。


「いろいろ事情があってのう。 君達には魔法の存在を明かすことにした。 まず真っ先に君達にお願いせねばならないのは、今までワシらが隠して来たように君達にもこのことは隠して欲しいということじゃ。 もしかすると秘密を抱えることにより負担に感じるかもしれんが、当然ながら君達にとって利点も十分にある。」

結局現状ですぐに完全に理解するのは無理でも若い少女達なのだから時期に理解するだろうと考えた近右衛門は、極々基本的な要点を纏めた話からしていく。

まず真っ先に教えねばならないのは魔法を秘密にすることであり、当然ながら悪意を持って魔法を第三者にばらしたらペナルティがあることも最初に教えた。

もちろんおこじょにされるという魔法世界の法ではなく関東魔法協会が独自に定めた法で、基本的には魔法関連の記憶の消去が厳罰になるのだが。

そして罰ばかりではなく利点や利益も同時に教えねばならない。


「君達にはワシらの都合で魔法を教え隠してもらわねばならん。 従って今後ワシらに出来る範囲でだが便宜を図ることを約束しよう。 具体的にはまた別の機会に相談することになるが、この先の高校や大学の推薦や学費に関してはそれなりに便宜を図れるじゃろう。 まあそれぞれの家庭の状況にもよるし、どういう形になるかは今のところ決めてないがの。」

いつの間にか静かになった少女達に近右衛門は利点を語るが、現状ではまだ一般の魔法協会員と同じく学園での推薦や学費の援助をする程度しか決めてない。

正直あまり過剰な優遇は近右衛門自身は立場上難しいが、横島や雪広家と那波家も居るので大抵の要望は答えれると考えている。

まあ流石に現金が欲しいと言われると教育上困るが。


「その前に一つ、私達に何をさせたいのですか? 意味もなく魔法の存在を明かした訳ではないでしょう。 一方的に魔法を明かして隠す便宜を図るというのは筋が通りません。」

一方少女達はエスカレーター式の麻帆良学園の推薦はともかく学費の援助は興味を抱き顔色が変わった者も居た。

ぶっちゃけ一般家庭において麻帆良学園の学費は負担が大きく、世間的に不況のこの時代に大学まで確実に通えるのは十分な魅力である。

しかしあまりにいい条件に夕映は相応の負担があるのではと疑っていた。

近右衛門は魔法を隠す対価のように語ったが、そもそも一方的に魔法を明かして便宜を図るというのはどう考えても変なのだ。

当然ながら夕映達に明かした訳があるはずで、それを先に聞かねば約束など出来るはずがない。


「うむ、具体的に君達になにかをやらせる予定は今のところない。 正直君達に今日秘密を明かした最大の理由はこちらの都合で木乃香に魔法を明かさねばならなくなったからじゃ。 仮に木乃香やあやか君や千鶴君だけが横島君と魔法を秘密として共有したらどうする? 君達は確実に秘密を嗅ぎ付けて問題にするじゃろう。 どうせ問題になるなら最初から教えてしまえばいいということじゃ。 のう、横島君。」

「そういうことだよ。 今テレビでやってるビブなんとかってアニメみたいに夕映ちゃん達に魔法少女になって悪の組織と戦えなんて間違っても言わんから。 ってか夕映ちゃん達を魔法協会に獲られたらうちの店が潰れちまうだろうが。」

美味しい話には裏があるのではとの夕映の言葉に少女達は警戒心が高まるが、近右衛門は詳しい理由は伏せつつも真実をそのまま語って少女達が一番信頼する横島に話を振っていた。

横島は夕映達の警戒は尤もだと思いつつもそれはあり得ないと、最近タマモが見てる魔法少女が出てくるアニメを持ち出して言い切る。
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