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平和な日常~冬~4

「まず始めに言っておくが、これから話すことは真面目な話じゃということは覚えておいて欲しい。 特に早乙女君は興奮して話の腰を折らんようにの。」

ビリヤードやダーツなどがある遊戯室からサロンに移った一同はお手伝いさんが入れた飲み物を前に一部の例外を除いて少し緊張感ある様子であり、近右衛門が本題に入る前にと前置きを語ると一体何を話すのかと魔法を知らない少女達は固唾を飲んで見守る。

どうやら基本的に魔法関連の説明は近右衛門がしていくようで、横島はタマモを膝の上に乗せて聞き役に徹していた。

実は当初横島に説明をさせようと考えていた近右衛門であるが、そもそも横島はこの世界の秘密は知っていても一般的な魔法関連の知識はかなり疎いことに気付き、今度は刀子に頼もうと考えていたのだが最終的に清十郎の提案で同席することになった以上は自分で話すことにしたらしい。


「君達にはこれからワシらの秘密を明かそうと思う。 それは荒唐無稽な冗談のような話じゃが全て現実であり真実じゃ。 具体的には明日菜君・綾瀬君・宮崎君・柿崎君・釘宮君・椎名君・村上君の七名以外は多かれ少なかれ知っとることなんじゃが。」

話をしていく近右衛門の様子は飄々としたもので日頃生徒達に見せる表情と変わりなく、前置きが長く少しもったい付けた言い回しからもこれは楽しい話ではなく説教かとハルナはすでにテンションが下がっていた。

ただ夕映やのどかは現状の不自然さに気付いている。

そもそもお説教の類いにこれほど大人が集まる必要はなく、まして京都から木乃香の両親が来る必要は全くない。

集まってるメンバーの顔ぶれからも重要な話であることに変わりはないのだが、頭の回転の早い夕映はもしかすると横島がこの中の誰かの隠し子かと壮大な勘違いを始めていたが。


「これが何か分かるかのう?」

そんな興味津々な者やテンションが下がる者など反応が様々な少女達に対し近右衛門は覚悟を決めると、自ら小さな火種を作る魔法を使って見せる。

するとライターの火よりも少し大きな炎が近右衛門の指先に現れるが、それは東洋系の魔法であり杖ではなく印を組んで【ラン】という大日如来の真言を用いた呪文を唱えた魔法である。


「手品ですか? 確か以前に横島さんが似たような手品をした気が……」

赤々と燃え盛る炎に少女達の視線が集まるが、残念なことに火種の魔法程度では日頃から見ている横島の手品と大差なく驚く者は居ない。

その瞬間もったい付けた割に近右衛門の隠し芸かとガッカリした思った者も居たが、ふと視線を横島に向けると横島は近右衛門より一回り大きい野球のボールサイズの火の玉を何個かでお手玉をしていた。

器用に上空に放り投げた火の玉を熱がる様子もなく次々とお手玉のように回すそれは、今までに見たことないモノだが横島がやると手品にしか見えない。


「横島君、君は手伝いたいのか邪魔をしたいのかどっちなんじゃ?」

「あれ? 邪魔になってます? 派手な方が分かりやすいかと思ったんっすけど。」

結果として近右衛門と横島には少女達から手品に対する半分お世辞のような拍手が送られると、近右衛門は少しため息混じりに横島に声をかける。

正直近右衛門の火種の魔法は地味なので分かりやすいようにと横島も魔法というか火の玉を作って見せたのだが、ついお手玉のように回してしまったのはまずかった。

尤も横島が魔法らしい魔法を使う姿を始めて見た刀子や高畑などの大人達や、先日魔法を知った木乃香・あやか千鶴は普通に驚いていたが。

実のところ横島は知らないがそもそも火の魔法でお手玉をするような魔法使いは居ないし、初歩とはいえ複数の魔法の同時制御は簡単ではない。

まあ横島にとってはなんとなくやってしまう程度のことだったが。

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