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平和な日常~冬~4

「うわ~、綺麗ですね。」

その後冬の早い夕暮れを迎えると、雪広邸では大小様々な照明が屋敷の中ばかりか庭においても煌々と光を放っていた。

それはただ闇を照らすことを目的にした光ではなく屋敷や庭を一つの芸術として照しており、決して嫌みのない光の芸術にさよは思わず感動の声をあげる。

かつてさよにとって闇夜を照らす光は永遠に続く孤独と闇夜の恐怖から自分を守ってくれる唯一の味方だった。

普通の照明ががこれほど美しいとさよは今まで気付く余裕がなかったのかもしれない。


「さよちゃん、カラオケやるよ!」

そんなさよはタマモと一緒に興奮した様子で屋敷や庭を飽きることなく見ていたが、他の少女達は少々飽きてきたらしくあやかに頼んでカラオケをすることにしていた。

尤も他にもまだ招待客は居るので以前の麻帆良祭後のパーティと違い、広いパーティルームではなくオーディオルームでのカラオケとなったが。

メンバーはあやかを除く横島達の他にハルナと夏美とまき絵達四人に鳴滝姉妹まで加わっていたが、オーディオルームは広いのでまだ余裕がある。


「マスターも微妙にしか似てないモノマネはいいから普通に歌ってよ。」

「なにっ!? このモノマネ俺の十八番なんだぞ!」

人数も多いので相変わらず賑やかなカラオケになるが、カラオケボックスとの違いはちょっとした映画館に匹敵する大きなスクリーンでカラオケの歌詞の映像を流してることか。

まあ今更雪広家の凄さに驚く面々ではないが、ただそんな少女達の中で美砂だけは少し呆れた表情をするとモノマネをしながらカラオケをしていた横島にクレームを付けていた。

実際横島は無駄に歌唱力もあるので結構ウケてるのだが、美砂は何故か不満があるらしい。


「えー、面白いじゃん!」

「そうだよ!」

割りとモノマネに自信があったのか少しへこむような横島にまき絵や鳴滝姉妹は面白いからと美砂の意見に抗議するが、美砂も別にやるなとは言ってない。


「せっかく歌うまいのにさ。 少しは真剣に歌ったのも聞いてみたいじゃん。」

基本的に何かある度にお笑いというかウケ狙いに走る横島が美砂も嫌いではないが、もう少しだけでいいから真面目にして欲しい時がたまにはある。

理由は言わずとも知れたことだろうが。


「俺が真剣に歌って誰が面白いんだ?」

「……あのね。」

正直美砂の気持ちは周りの少女達はタマモとさよ以外はみんな理解しているが、やはり横島本人は全く理解できないらしく素の表情で不思議そうにしていた。

ぶっちゃけ美砂の横島に対する想いは特に隠してもないので周りはみんな知っているが、横島がその手の感情に全くのおバカさんなのもみんな知っている。

この男はやっぱり分かってないんだなと呆れたような視線が横島に集まっていた。


「わかったって、真面目に歌えばいいんだろ? 飽きたなら飽きたって言えばいいだろうが。」

結局横島は周りの空気を読んで真面目に歌うと言うが、やはりわかったと言いつつ全然分かってないことにはため息を溢す者もいる。


「マスターも勉強と料理修業ばっかりしてないで、ちょっとは女の子の気持ちも勉強しないと……」

「人を真面目ながり勉みたいに言うな! それに俺はちゃんと女の子の気持ちも分かるぞ!」

そして最終的には呆れた様子の裕奈に真面目に注意をされてしまい、当の横島は当然ながら違うと反論するも女の子の気持ちが分かるという部分だけは誰も信じてくれなかった。

まあ横島が勉強や料理修業ばかりする真面目ながり勉タイプでないでのは木乃香達や美砂達は理解してるが、流石に裕奈はそこまで横島を知らないようである。

どうやら一部の人は横島が根は真面目なのだと誤解してるらしい。
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