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平和な日常~冬~4

それに対して横島に対して露骨に対抗意識を燃やしていたのは、今日の招待客の中でも取り分け若い部類に入る十代と二十代の男性達だろう。

大半は招待客の家族として来ている者だが、どちらかと言えば一般家庭というよりはセレブに近い人が多いらしくプライドが高そうな者が多い。

彼らは横島を値踏みするような者が多いが、まあ流石にこの場でそれ以上の因縁を付ける馬鹿は居ないようだ。


「明けましておめでとうございます。」

そして今日は両親と一緒に来ていた千鶴が横島達の元に来ると彼らの嫉妬めいた視線は一層強くなるが、周りに居る少女達ははともかく横島自身は全く気にする様子はない。

正直なところ横島も彼らの心情は理解するし、仮に昔の横島が彼らの立場だったら露骨に嫌がらせでもしたかもしれない。

いわゆる雪広家を中心にしたコミュニティによそ者が入り込んで好き勝手しているのだから、彼らが対抗意識を燃やすのは当然だった。

まあ横島とすれば気持ちがいいものではないがこの程度の問題を気にするほど弱くもないし、そもそもそこまで人間を信じても無ければ期待をしてもない。

麻帆良に来てからは不思議といい人ばかりに囲まれているので横島自身も忘れがちだが、根本的に横島は今も他人は元より自分ですら信じていなかった。

ただ今の横島が昔と違うのは周囲に信頼出来る存在が居ることと、自分の中に信じられるモノが居るからだろう。


「明けましておめでとう。 今日も綺麗だな~。」

「ありがとうございます。」

さて周囲の状況はともかくとして、横島はこの日も相変わらず恥ずかしげもなく少し控え目なオシャレをする千鶴を褒めていた。

いつもながらまるで挨拶のように女性を褒める横島であるが、千鶴自身は素直に嬉しそうである。

周囲にはたくさん人が居るなかで素直に嬉しそうな表情をする千鶴は幼い頃から千鶴を知る者にとっては驚きであったが、横島の周囲の少女達からするとさして珍しいものではない。

夕映やのどかなどはよくまあ恥ずかしげもなく褒めるなまて半ば感心しているが、すっかり横島のペースに慣れてるせいか普通に聞き流していた。


「そういえば、麻帆良・オブ・ザ・イヤー残念だったね。」

その後千鶴が来たことで美砂達はセレブのお正月はどうだったのと興奮気味に千鶴に尋ねるも、千鶴自身はセレブという発言に少し困ったような表情を見せつつ今年は家で家族とゆっくりしていたと語る。

意外と庶民的な千鶴だけに違和感はないが美砂達は少しつまらなそうであり、そんな美砂はふと思い出したかのように昨年の麻帆良・オブ・ザ・イヤーの話を持ち出す。

以前にも少し説明した昨年の麻帆良・オブ・ザ・イヤーは昨年の大晦日に発表されたが、残念ながら最有力候補と言われた横島は落選していた。

注目度や話題性は抜群だった横島であるがマイナスポイントになったのは、実際に何をどこまで横島がやったのかはっきりしないことが多すぎたことである。

麻帆良祭や納涼祭に体育祭とお祭り男と言っても過言でないほど目立ち世間的に本業だと見られている料理において麻帆良カレーを考案した件は評価されるも、他は何処まで横島の活躍があったのかイマイチはっきりしない。

結果として昨年の麻帆良・オブ・ザ・イヤーは、料理大会において前人未到の三連覇を果たした新堂美咲に決まっていた。

勝因は料理大会の三連覇と昨年のクリスマスパーティで高評価を得たことであった。


「当然だろ。 俺なんもしとらんし。 慎ましく毎日生きてるだけだからな。」

美砂を始め周囲の少女達や店の常連は横島の麻帆良・オブ・ザ・イヤーを確信していて少なからず残念がった者も居たが、当の本人はこちらもほとんど興味がなく相変わらず自分では慎ましく生活してるつもりらしい。

木乃香達はまだ言うかと半ば呆れ顔をするも、横島がわりと本当にそう思ってるのを理解するだけに呆れるしか出来ないというのが本音だろう。

実際横島の過去からすると慎ましく生活してる部類に入るのだが。


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