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GS試験再び……

二人がその場を離れる中、あまりにあっけなく終わった試合に会場内は静まり返っていた

雪之丞の実力に言葉も出ない者も居れば、何が起きたのかさえわからない者もいる

総じて言える事は、前評判とまるで違う静かな戦いに対する驚きだった


「また腕を上げたわね……」

久しぶりに雪之丞の戦いを見たエミだが、彼女も会場内の人と同じく驚きの表情である


「あいつ天狗の修行を受けてから、また強くなったんすよね~」

「天狗って、あいつ何してるのよ!?」

横島がポロッと天狗の名前を出すと、エミは更に驚き目を見開く

修験者が変化したと言われる天狗はその実力はもちろん折り紙付きだが、基本的に人間と関わる事など全く無い存在である

かの有名な源義経が鞍馬山の大天狗に師事を仰いだなど歴史上には何度か登場はするものの、実際にはGSでさえ関わる事が無い存在だった


「少し前に知り合って、俺と雪之丞は今でもたまに行って修行してますよ」

相変わらずそんな知識のカケラも無い横島は、自分達の特異性に気が付いてない

またまたいい天狗に会ったくらいにしか考えてないのだから、横島らしいと言えばそれまでだが


「おたく達は相変わらずなワケ」

GSのレベルを逸脱した修行をする横島と雪之丞に、エミはそれ以上言葉がでなかった

強くなりたい気持ちは理解するエミだが、それでも横島と雪之丞の行動は常軌を逸している

人を越えるほどの強さを求める事は一歩間違えれば更なる危険を招く事を理解してないだけに、二人の危うさに危機感を募らせていく


(結果的に魔鈴でよかったんでしょうね)

偶然か運命かは知らないが、横島と雪之丞の側に居るのが魔鈴でよかったとエミは思う

その力や才能の割には常識や知識があまりにも欠けている二人なだけに、導くのは簡単ではない

ある意味GSを本業にしない魔鈴が最適かもしれないとさえ思っていた


「雪之丞さんには今回の試験で魔装術を使わないようにお願いしました。 アレはイメージが良くないですし、強すぎますから。 それと戦い方も相手に先手を取らせる事と、出来るだけ相手を無傷で勝つ事もお願いしてます」

エミの微妙な表情を察した魔鈴は、今回の試験での雪之丞の作戦を話し始める

戦いに関しては素人な魔鈴だが、戦いにおいて相手や観客に与える印象を考えた作戦を立てていた

雪之丞の問題は勝つ事では無く勝ち方なのだ

最初の印象が悪い分だけ態度と戦い方で違う印象を与えるしかないが、この場合ギャップがあると効果的になる

この辺りの作戦は、百合子やタマモとの共同で考えた作戦であった

戦いと言うよりはプロモーションに近い考えだが、雪之丞本人が反対しなかったことでこの作戦に決まっている


「なるほどね、それでらしくない戦い方だったのね」

「はい。 雪之丞さんがGSとして生きていくなら、この試験で印象を変えるしか無いと思ったので……」

雪之丞の立場や評判を利用した戦い方を考えた魔鈴を、エミは見直していた

良くも悪くも真っ直ぐな魔鈴には、あまり細かな工作が得意には見えなかったのだ

この作戦にはそんな魔鈴が考えたとは思えないほど、したたかな目的がある

実際は細かな指示はタマモと百合子のものなのだが、そこまで細かくは説明しないのだし

エミは魔鈴を軽く誤解していた


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