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平和な日常~冬~4

「全く、魔法球くらい自前で用意しろ。」

同じ頃高畑はエヴァ宅を訪れてボトル型魔法球の別荘に入っていた。

最近はあまり来なくなったが昔はエヴァの別荘で修行をしていたこともあり、修行を終えたあとも時々来てはエヴァに修行をつけてもらっていたのだ。

この日の高畑の目的も修行であり、悠久の風と距離を置いて以降しばらくまともな修行も実戦も経験してないため久しぶりに修行に来たようである。


「自前で持つのもなかなかね。」

高畑の場合はその力と実力故に麻帆良では修行する場所を探すでさえも大変で、特に修行相手が欲しいときは必然的にエヴァを頼るしかない。

この日もエヴァは少し面倒そうな表情をしており、酒の差し入れでようやく頼みを聞いてもらっていた。



「そう言えば貴様、最近行ってないらしいな。 どういう風の吹き回しだ?」

寒い麻帆良から突然真夏のような別荘に入ると高畑は来ていたジャケットを脱いで修行の準備を始めるが、エヴァはふと最近の高畑の変化について口を開く。

あれだけ熱を上げていた悠久の風の活動にピタリと行かなくなったのは、学校にほとんど行ってないエヴァですら知っている。

近右衛門といい高畑といい最近は何かと変化があることは、エヴァとしても全く興味がない訳ではないらしい。


「幾つか事情が重なってね。 一つはクルトが暴走したことと、一つはアーウェルンクスの健在が確認されたこと。 それともう一つは自分の現状をある人に気付かされたからかな。」

少し皮肉めいた口ぶりで変化の訳を問い掛けたエヴァに、高畑は僅かに苦笑いを浮かべつつも嘘偽りなくその訳を語った。

高畑が未だに麻帆良を離れない訳は明日菜を守る為であるが、同時にネギを利用しようとしたクルトに怒り失望したのも確かだ。

そして自分の現状を気付かされたことが、今もなお魔法世界に関わらない最大の訳だろう。


「またあの男か。 本当に大人しくしてられんやつだ。」

「そう言えばエヴァもあの店の常連だったか。 なら言わなくても分かるだろう? もう少しで喰われるところだったよ。」

高畑の変化の原因は一つではないが、それでも複数ある原因の一つに横島が絡んでると知ると最早呆れた表情をするしかない。

尤も高畑はあえて個人名を出さなかったが、エヴァには考えるまでもなく見抜かれていた。


「それはあの男云々ではなく貴様が目の前を見て無かっただけだろう? 貴様を求める娘も教え子も放置しておいて、何を今さら。」

「それを言われると返す言葉がないなぁ。」

「少なくともあの男は目の前を見てるだけ貴様よりマシだ。」

しかし高畑が冗談混じりに喰われるという言葉を使うと、エヴァは一転して不機嫌そうな表情になり一切の遠慮もなく高畑を責めるような言葉を口にする。

高畑としては横島の影響力を表現するのに多少誇張して言った言葉であるが、どうやらエヴァのお気に召さなかったらしい。


「貴様本当に分かってるのか? 貴様程度の力で守れるモノなどたかが知れてるのだぞ。 中途半端に期待を持たせるくらいならば、いっそあの男に全部任せて向こうに行けばいいではないか。」

高畑自身は未だに迷いや悩みから抜けきっていなく、現在の状況的に麻帆良に軸足を置いたに過ぎない。

正直なところ明日菜も麻帆良も魔法世界も全てを守りたいのが高畑の理想であり本音である。

そんな高畑の本音を見抜いたエヴァは相変わらず一切の遠慮もなく、辛辣な言葉を平然とぶつけていた。
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