その二

そして完全な別居が決まったことで引っ越しをしたりとバタバタしていたかおりだが、クリスマスイブの日になると約束通り横島と会う為に出掛けていた。

母も祖父母も行ってきなさいと笑顔で送り出していたし、ある意味かおりは横島と会いたいが為に闘竜寺を出たので当然のことではあったが。


一方横島は待ち合わせ時間の三十分もまえに待ち合わせ場所の駅に到着していた。

何だかんだと考えつつクリスマスに女の子とデートするとなると楽しみで仕方なかったようで、さほど高価な物ではないが下は靴から洋服に下着に至るまで全部新品の物を着てきたほどの気合いの入れようである。


「お待たせしました。 早いですわね。 十分も前に来たのに。」

「いや女の子を待たせる訳には……。 って化粧したんっすか? 美人度が更に上がったっすね。」

かおりが待ち合わせ場所に到着したのは約束の十分前だった。

元々真面目で時間に厳しいかおりはいつもの待ち合わせも常に五分前には来るがこの日はそれより更に早く十分も前に来ている。

さすがにすでに横島が待ってたことに驚くかおりであるが、対する横島はこの日のかおりがいつもと違い化粧をして来たことに即座に気付いていた。


「ええ、以前は父が煩かったんで出来なかったんですわ。」

元々かおりは口紅くらいは塗ることはあったが、本格的に化粧をするのは父の手前出来なかったという事情があったのだ。

ただ現在は母の実家なので気兼ねなく化粧が出来たことと母も化粧くらいしなさいと言うので、慣れないながらかなり時間を掛けて化粧して来ている。


「そんじゃ、行きましょっか。」

横島がすぐに苦労した化粧に気づいたことに早くも機嫌を良くしたかおりは、横島と共にさっそく電車でデジャヴーランドに向かう。

イブのこの日はまだ朝とも言える時間にも関わらず街や電車の中も少し浮かれたような雰囲気にも感じる為か、横島もかおりも二人で出かけるのに多少は慣れたはずなのに意識してしまう為か少し緊張した感じにも見える。


「そういや、家の方は大丈夫?」

「大丈夫だと思います。 母はすでに闘竜寺に戻る気がないようで年明けにも働くと言ってますし、私の新しい修行先もすでに考えてますから。」

その後何か会話をしないとと思った横島は気になっていたかおりの近況を尋ねるも、すでに前を向き歩き出してる母親に自身の母親に母である百合子を重ねたからか少し苦笑いを浮かべた。

横島とすれば早く迎えに行かないと手遅れになるんじゃないかと気になるものの、先日の話を聞く限りだとそれも難しいんだろうなと思いどう反応していいか悩むことになる。


「修行先って、また寺か? 時々しか無理だけど妙神山に行って小竜姫様に頼んだ方良くないか?」

「あっ、いえ修行先というかGS試験を受ける為にはGSの師匠を見つけなくてはなりませんから。 でも多分寺は行きませんわ。 父と喧嘩して飛び出したようなものですから寺関係のGSは相手にしてくれないかと。」

とりあえず前回には聞かなかったかおりの今後の話を聞いていく横島であるが、かおりが新しい修行先を探してると聞き妙神山の名前を出す辺り横島はやはりオカルト業界のことを本当に知らないんだなとかおりは痛感する。


「相手にしてくれないのか。 なんつうか了見が狭いな。 俺もなんか力になってやりたいけどGSなら小竜姫様に頼む訳にもいかんしな。 美神さんは無理っぽいし、可能性があるのは唐巣神父を拝み倒せばなんとかってとこだしな。」

「修行先に関しては六道理事長先生に相談するつもりです。 悪いようにはしないかと。」

しかも困ったら令子か小竜姫に頼ろうとする横島に、かおりは横島に頼めば大変なことになるかもしれないと思う。

そもそも人間の問題なだけに小竜姫に頼るのはお門違いだと言えるが、ただ雪之丞の件を調べたりしたこともあるので全くない話ではない。

まあそれでも小竜姫が下手に動くとちょっと紹介してくれるだけでGS協会なんかは大騒ぎになる可能性があるので、横島には頼むのが怖いのが実情だった。


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