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新しき絆

食後…

横島は愛子とピートとタイガーを連れて屋上に来た


「で…、誰が弁当を作ったの?」

愛子はいつになく真剣な表情である


「その前にさ、お前なんでそんなにこだわるんだ?」

横島は愛子の迫力に困ったように聞く


「とっ…友達でしょ! 教えてくれてもいいじゃない!!」

愛子は少し慌てたように強く言い放つ

まさか横島が気になるとは言えない


「仕方無いな… 誰にも言うなよ? 特にタイガー、エミさんや一文字さんには絶対言うなよ!」

横島はため息をはき、タイガーに強く口止めする


「アッシは約束は守りますケン!」

タイガーは少しムッとする

横島の過去など、タイガーは魔理には話してない

口が軽いような扱いは心外である


もっとも、横島はタイガーを疑っている訳ではない

タイガーはこの中で一番、令子やおキヌに近い為口止めしたのだ


「あれは魔鈴さんが作ってくれた弁当なんだよ…」

横島は、興味津々な愛子とタイガーに仕方無く話した


「魔鈴さんって… あのレストランやってるって言ってた人?」

愛子は不思議そうに横島を見つめる

愛子の予想していた人物の中に魔鈴は居ない

おキヌや小鳩が本命で、令子辺りも可能性はあると思ってはいたが…

魔鈴自体、何度か噂を聞いただけだったのだ


「ああ、最近はよく店に行くんだよ。 夕食はほとんどあそこで食べてるんだ」

横島はとりあえず当たり障り無いことだけを話した

愛子はその間、ずっと横島を注意深く見つめている


「ただの客じゃないわね?」

愛子は確信を持って横島に問いかける

ただの客なら、初めからそう言うはずだし、あんな愛情に溢れたような弁当は作らない

愛子は確信を持って横島に問いただす


「いや…、まあな… 俺さ。 卒業後は魔鈴さんの店で働くんだ」

横島は少し照れたように笑って説明する

魔鈴のことは嘘をつきたくない、という気持ちからである


「美神さんの事務所を辞めるんですかいノー?」

タイガーは驚いて横島に問いかける


「ああ、辞める。 ただ、いろいろ問題が多いからまだ秘密なんだ。 だから誰にも言わないでくれ…」

愛子とタイガーは、いつもと違い真剣な表情に目を奪われる

そしてタイガーとピートは、横島の真剣な表情にあの戦いを思い出していた

(あれから一年か…)

ピートはなんと声をかけていいかわからない


「横島君…、変わったわね。 少し前からなんとなく感じてたけど… いい顔するようになったわ」

愛子は優しく微笑む

だがその笑顔は少し寂しそうだ

横島はそれに気がつくが、その意味を理解出来ない


(愛子さん、やはり横島さんを…)

ピートは愛子の気持ちに気がつくが、こちらも何も言えない


「いろいろあったんだよ… 俺の全てを変えてしまうほどのことがな… そして、一番苦しんでた時、支えてくれたのが魔鈴さんなんだ…」

横島は複雑な表情で、ゆっくりと語る

少し遠くを見つめるその瞳には、何故か悲しみで満ちている


ピートとタイガーはその瞳の意味に気がつくが、愛子は知らない


(横島君…)

愛子は何があったか聞きたいが、言葉がでない

ピートとタイガーは、複雑な表情で無言のまま横島を見ている


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