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神と人と魔の狭間で

「不毛な時間ですね。」

「まあね。 昨日のうちに避難を始めてくれれば早いとこ乗り込めたのに。」

朝食後出来ればすぐにでも現場の地下に突入したかった小竜姫とGSチームだが、未だに避難が完了しないとなり動けずにいた。

小竜姫は決して声を荒げたりはしないが内心ではあまりに足を引っ張る香港当局に苛立ちを募らせていて令子はそれを察知してか少しため息を溢す。

満月が昇れば元始風水盤が本格的に作動するのに香港当局の対応はあまりに遅すぎた。

政治的な駆け引きからギリギリまで動かなかった香港当局は、地下での戦いがどれだけ危険で不確定要素の塊であることを理解してないのが余計に小竜姫を苛立たせている。

まして香港は人口過密都市であり避難一つでも時間がかかるし騒ぎにもなる。

霊障での対応に慣れているオカルトGメンが全面に出て避難させればまた違ったのかもしれないが、香港当局は一部地域の除霊の為の避難として避難を頼んではいるがお国柄か人口過密都市故か観光客などの対応への不備からか避難完了が遅れていた。


「申し訳ありません。 本部は緊急部隊を編成しいつでも投入出来る準備はしたのですが部隊の強制投入はICPOの権限では不可能なのです。 最悪の場合は小竜姫様の判断によりGSチームの撤退をなさるようにとのこと。 後始末はオカルトGメンが引き受けます。」

「ありがとうございます。 可能な限り風水盤は止めますので本部には良しなに伝えてください。」

ただ小竜姫の様子に一番忙しく動いているのは西条であり、オカルトGメン本部と連絡を取り突入のタイミングと元始風水盤作動までのタイムリミットを考え対応と事後処理を含めた対策に追われている。

香港当局や本部と小竜姫達の間に挟まれた西条の申し訳なさげな姿には横島ですら同情するほどで、ただホテル待機をしてるばかりのGSチームの面々が大人しく待ってる理由にもなっていた。


「撤退って本当にやれば日本もタダじゃ済まないんじゃあ……」

「それはそうだが我々は小竜姫様やヒャクメ様と民間のGSに死んでも解決しろとは言えないんだよ。 日本を含めた周辺国と地域にはすでに通達して出来うる限りの対策を頼んでいる。 万が一作動したら最早何が起きるか想像すら出来ない。 だがそれでも優秀なGSは使い捨てには出来ない。 特に作動後の対策を考えればね。」

そして小竜姫と撤退について現実的なタイミングにオカルトGメン本部への通達方法など話し合いをする西条には、日頃小竜姫と共に居ても小難しい話には加わらぬ流石の横島も驚き珍しく口を挟む。


「横島君。 覚えておきたまえ。 ここまで来ると先に命を賭けるべきなのはここを統治する香港政府と香港人なんだよ。 これは絶対極秘事項だから他言無用だが本部は広域結界での香港の封鎖も検討して密かに部隊を近隣に派遣した。 効果の程は知らないが一時的にでも抑えられたら香港ごと風水盤を破壊するしかないかもしれないからね。」

横島は横島なりに神族としての小竜姫の仕事は邪魔するまいと考えているが、最早事態は一刻の猶予もならずに香港の切り捨てとも言える最終対策をオカルトGメン本部が検討してると聞くと顔色を真っ青にした。




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