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平和な日常~冬~3

「やめとけって。 言霊を使って自然の理を変える魔法使いが不用意なことを軽々しく口にするもんじゃねえぞ。 普通の人間の言葉でさえ口に出した時点でその存在を固定しちまうことがあるからな。 後々後悔することになる。」

横島の話を完全に信じてなく馬鹿話を楽しんでるエヴァは上機嫌な様子でドSなオーラを全開にするが、そんなエヴァの持ち掛けた賭けというか約束に横島はついつい笑ってしまうと不用意なことを言わない方がいいと告げる。


「ほー、たいした自信ではないか。 そんな馬鹿馬鹿しい話が本当にあるとでも? ああ、今謝るなら許してやらんでもないぞ。」

「あかんな。 エヴァちゃんギャンブルに向かないわ。」

正直横島はエヴァがいつ真実に気付くか、そして気付いた時にどう反応するかと考えて楽しんでいた。

近右衛門達や刀子は表立って信じないと言わなかったのであまりおふざけは出来なかったが、ここまで信じないと横島も遊び始めてしまう。

実際エヴァは横島の言葉をエヴァから賭けを不成立にさせるブラフだと思ったらしく余計に強気になるが、なんというか賭け事が向かないエヴァの姿には思わずかつての上司を思い出すほどだ。


「貴様の実力は分かってるからな。 自作の魔法球かなんかで遺産だと言っても無駄だからな。」

「ああ、そういやこの世界にはそれもあったんだな。 なるほど誤解の方が筋が通ってる訳だ。」

はっきり言えば利害関係もなく切羽詰まった状況でもないエヴァへの秘密の告白は横島としては少し楽しかったのも事実だろう。

あまりに非常識な真実は嘘に等しい存在として受け取られてしまい、エヴァの考える誤解の方がよほど筋が通っていて横島は素直に感心してしまった。

どうやらエヴァは魔法球やそれに類似する技術が横島にはあると見てるらしい。

実のところその技術はこの世界の最高峰の魔法技術であり、この時点でエヴァは横島の魔法技術を世界でもトップレベルだと見ている。

結局横島を評価するゆえに事実よりも誤解が筋が通ってしまったのは皮肉としか言えないが。

そもそも現状で横島が明確に示した力はさよの実体化と先日のエヴァ開放の魔法に今日の魔法料理と、魔法世界の極秘情報と超鈴音の秘密を知っていると匂わせたに過ぎない。

魔法の力は横島の判断材料にしたのだろうが、情報に関しては近右衛門から聞いたのだろうとエヴァは考えたようだ。

近右衛門が今年の春以降には何かと変化があったのはエヴァも知っていたし、アシュタロスの遺産云々よりは近右衛門が魔法世界の情報や超鈴音の正体に勘づいたと考えた方がよほど自然なのは事実な訳だし。


ただ、もしここにかつての横島の仲間達が居たならば「横島を下僕にするのだけは止めておけと…」と必ず言うだろうが。



「それで、どうやって証明してくれるのだ?」

「どうしよっか。 記憶は恥ずかしくて見せたくないし。 やっぱ向こうに連れていくしかないか。」

長年自身を苦しめた呪いも消え横島という退屈しないオモチャを見つけたエヴァは、見た目も相まっていじめっ子にしか見えなかった。

まるで好きな子をいじめるようにニヤニヤと証明する方法を尋ねるエヴァに、横島は異空間アジトに連れていくしかないかとため息をつく。

実際には記憶を見せるとか他の方法もあるが、ぶっちゃけ過去に関しては神魔戦争を抜きにしても自分の恥ずかしい過去を自ら見せたいとは思わない。


「まいっか。 どうせ木乃香ちゃん達も連れていかなきゃならんしな。 説明が面倒だから一緒でいいか?」

「……貴様、やっぱり私を巻き込む気だったな。 どうなっても知らんぞ。 それと約束は守ってもらうからな。」

結局横島はエヴァを異空間アジトに連れていくことに決めるが何度も説明するのが面倒だとの理由から木乃香達と一緒にしてしまおうとする。

魔法を知るエヴァですらこの様子なのだから、木乃香達への説明がもっと大変なことに横島はようやく気付いたらしい。

それは横島がただ横着しただけなのだが、エヴァは横島が自分を巻き込むつもりだったと更なる誤解を深めつつも巻き込まれることを表立って拒否することはなかった。

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