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平和な日常~冬~3

横島がこのタイミングでエヴァに自身の秘密を明かそうと考えた理由は、このままでは第三者から横島の情報がエヴァの耳に入る可能性を危惧したためである。

もちろん近右衛門達も木乃香達も横島の秘密は他言しないだろうが情報とはいつ何処から漏れるか分からないものだし、何より情報を漏らさないが故に中途半端な憶測や噂が真実のように耳に入る可能性は割りと否定出来ないことだった。

それに周りで知る人物が多いのに自分にはいつまでも隠されていい気持ちになる人物は居ないだろう。

もちろんエヴァ自身が聞くか聞かないかは別問題だが、横島から話そうとする誠意は必要なことである。

現状ではタマモもエヴァ達とは仲良くやっているし、そもそもプライドが高いエヴァ故にその対応はそれなりに気を使う必要があった。


「……私を巻き込む気か?」

そんな横島の問い掛けにエヴァはしばし無言になり聞くか聞かないかではなく、横島が自分に何を求めてるのかを逆に問い掛ける。

まあ気にならないと言えば嘘になるし聞きたいか聞きたくないかの二者択一ならば聞きたいのだろうが、エヴァにとっての問題も横島が何故このタイミングでこの話をしたのかに移っていた。


「助けてくれるなら助かるけど、ぶっちゃけ現状で俺やエヴァちゃんに出来ることはほとんどないんだよね。」

「どういう意味だ?」

エヴァに関しては魔法に詳しいし横島としては助けてくれるなら手放しで歓迎はするが、それでも現状ではエヴァに頼むような案件はほとんどない。


「今は闘う力は必要ないんだよ。 魔法協会内の調整とか東西の協力とか、外部を相手にした諜報戦なんかに加わりたいか?」

「……」

正直エヴァは横島の意図をイマイチ理解出来なかった。

出来ることがないと言われると少しムッとしたが、横島が語る現状には流石に固まってしまう。

実際出来るか出来ないかは横島もエヴァも別だが、その手のチマチマとした仕事が好きかと言われると当然ながら好きじゃない。


「単刀直入に言うと魔法世界はもう限界なんだよ。 最短で十年であそこは消滅する。 地球からの移住組の子孫を除いてな。」

「なんだと!?」

「魔法世界が消滅すればどうなるかは俺より詳しいだろ?」

自身の正体について回答しないエヴァだが話をする気はあると見た横島は自身が動く最大の理由を本当に単刀直入に一言で語った。

それはやはり衝撃だったようでエヴァは横島が初めて見たほどの驚きの表情を見せる。


「最低でも十年で魔法世界消滅の混乱を乗り越える準備が必要だろ。 このままじゃろくな未来にならないっぽいしな。 それこそ過去に歴史を変えに来たくなるほどにさ。」

「貴様、何故それを……。 貴様は一体何者だ?」

魔法世界の限界はエヴァにとっても衝撃だったようだが、横島はそこに追い討ちをかけるように更なるキーワードを囁くように呟く。

そしてエヴァは次から次にと語られる衝撃に、とうとう自分から横島の秘密を問い掛ける言葉を口にしてしまうことになる。


「俺はこの世界の存在じゃない。 別の次元の別の地球から逃げて来たんだよ。 世界が消滅しちまったからな。」

それはエヴァにとっても人生のターニングポイントになる一言であり、横島が語り始めたその正体の意外さに言葉を挟むことすらなくただ聞いているだけであった。



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