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平和な日常~冬~3

その後も食事は和やかな雰囲気のまま続いていく。

タマモとさよは魔法料理の価値は理解してないようだが、なんとなく凄い料理だとは感じたらしい。

まあ二人は魔法料理が凄いのかフグが凄いのかすら判別出来ないだろうが。


「これは貴様が考えたのか?」

「まさか、魔法料理を作ったのは別の人だよ。 まあ受け継いだのは俺しか居ないけど。」

途中からヒレ酒も作って横島はエヴァとチャチャゼロと酒を飲みながらフグ料理を楽しむが、身体が活性化し力がみなぎるような感覚と酒のアルコールでエヴァとチャチャゼロは今までに経験したことがない心地よさに包まれていた。

そんなエヴァはふと興味深げに魔法料理について尋ねるが、横島は少し苦笑いを浮かべ否定する。


「誰だか知らんがたいしたものだ。 発想の原点はありふれたものだが、ここまで完成させるのは簡単ではない。 私も長く生きたが初めてだ。」

対するエヴァはまさか自身の全く知らない魔法があるとは思わなかったようで珍しく手放しで褒めていた。

そもそも魔法料理の発想の原点自体はさほど珍しいものではないし、食べることこそ生きる基本であるというような考えを昇華させたようなものでしかない。

だがどんな技術や魔法にしろ後から学ぶのと自ら生み出すのでは、その難易度は次元が違うと言っていい。

長く生きたエヴァはその先駆者に対して敬意を持ったのは、彼女もまた自らの人生において新たな魔法を生み出した経験者であり生みの苦労を良く知るからであろう。

ただ実際エヴァもまさか魔法料理の生みの親が二十代半の若さであったことや、すでに失われた魔法を少ない資料から再現したと知れば驚きでは済まないかもしれないが。



「そういや自由になって何かやったか?」

「いや、私が動くと少なからず目立つしな。 少々つまらんが厄介事はごめんだ。」

そのまま食事はシメの雑炊まで完食して終わり、タマモとさよがチャチャゼロを連れて広いお風呂に行くと茶々丸は別荘を管理する他の人形と一緒に後片付けに行ってしまった。

横島とエヴァはヒレ酒の延長で日本酒をちびちびと飲んでいたが、横島は少し唐突に呪いを解いた後のことを尋ねていた。


「厄介事かぁ。 放っておいていいなら俺も放っておきたいんだけどな。」

「嘘つけ。 貴様のことだから文句を言いつつも自分から首を突っ込んだんだろう?」

「自分の店くらいは守りたいだろうが。 それに厄介だからって放っておいて後手に回れば後でもっと厄介になるしな。」

タマモ達が居なくなり静かになった部屋で横島は少しため息をつくと愚痴るように厄介事は放っておきたいと本音を吐露するが、エヴァは横島の言葉はあまり信じてないようで鼻で笑うように横島の現状をほぼ正確に言い当てる。


「それであの店を守るために世界でも救う気か?」

「それは本当にない。 でもこの街くらいは守らなきゃ楽しく生きられないだろ。」

何故か横島がエヴァにお酌をする中で淡々と話をする二人だが、エヴァはエヴァで横島の現状とこの先を少し心配してるのかもしれない。

流石に冗談半分だが、半分は本気で横島が世界に関わる厄介事に首を突っ込むのではと考えているようだ。


「それとなんか勘違いしてる気がするから言っとくが、俺は間違っても自分を犠牲にする気なんてないし勝てない勝負なんてやつも絶対にする気はないぞ。」

「お世辞にも計画性がある人間にはみえないが?」

「それは俺の相棒の仕事だからな。 実はさ、今日来たのはその話をしようと思ったんだよ。 学園長先生達にはこの前話したし、木乃香ちゃん達にも近いうちに話すことになる。 聞きたいか? 俺が何処から来て何者なのかを」

日頃からあまり感情を表に出さないエヴァは今この瞬間もあまり表情は変わらなく、呆れたような表情を時々する程度だった。

横島はそんなエヴァがなんとなく勘違いしてる気がしたので自分が犠牲になるのは元より勝てない勝負はしないと言い切るが、エヴァから見ても横島はお世辞にも計画性がある人間には見えないようである。

そして横島は今日ここに来た目的の一つをようやく口にしてエヴァに自身の秘密を知りたいかと尋ねていた。

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