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平和な日常~冬~3

「これが魔法世界ご自慢の空中船なのね」

「コスパは良さそうだけど、これあっちじゃないと仕えないんだろ?」

そして空中艦を見に行った横島と穂乃香達だが、皆初めて見る空中艦に興味津々な様子である。

そもそも空中艦は魔法兵器なので攻撃力と防御力は地球の戦闘機の比ではなく、その巨大さ故にスピードと旋回能力は劣るが仮に戦闘になれば敵ではないとメガロ出身の魔法使いは自慢げに言うことがあった。

まあ地球と魔法世界では世界を構成する魔力濃度の違いなどの要因があり、基本的には魔法世界の空中艦は地球では仕えないというのが定説と言うか常識があるので直接的な比較はナンセンスではあるが。


「元々向こうは不完全な魔法で構成された世界っすからね。 向こうの物質は外に出すとあんまり安定しない物質が中にはあるらしいっすよ。 浮遊システムの基本的な魔法はこっちでも有効ですし、地球にある物質だけで一から作ればこっちでも動きますよ。」

空中艦というか空中船は魔法世界では車や船のように物流の足になっていて、軍事的な意味合いを除いても地球でも欲しいとの声は以前からあった。

ただし魔法世界にしかない物質を使わない空中船は今のところ地球側で開発に成功したとの話は聞いたことがない。

古くはナチスドイツや現代ではアメリカやロシアが密かに研究してるとの噂もあるが、その真相は定かではない。

まあ地球側で開発に成功しない理由としてはメガロメセンブリアが魔法工学の情報を地球側に可能な限り秘匿していることもあるし、その手の技術者を間違っても魔法世界から出さないという事情もある。

それに地球側でも秘匿技術のため開発費や人材の確保が難しいことも理由に上げられていた。

ちなみに余談だがアメリカのUFO関連の噂の真相はこの魔法技術による飛行機ではとも魔法関係者の間では囁かれている。


「もしかして造れるの?」

芦優太郎が居ないことから珍しく自分で説明する横島だが見た目と違い技術的な話は詳しい。

元々ルシオラが魔法というかオカルトの技術者だったこともあるし、ドクターカオスに晩年はこき使われたせいでカオスの魔法科学まで覚えてしまった影響もある。

まあカオスに関しては自身の死期を悟ったカオスが横島に自身の技術を残したのが真相なのだが。


「造れますよ。 って言うか土偶羅がもう造ってた気が…… 一応見た目は魔法世界仕様にしてるはずですけど、あっちでしか仕えないのは不便ですし使わなかったらもったいないじゃないっすか」

意外と技術面に詳しい横島に驚く穂乃香達だがすでに魔法世界外でも使える空中船を造っていると聞くと、最早褒めていいのかあきれていいのか分からなかった。

まして造った理由が不便ともったいないという至極庶民的というか人間らしい理由なのだから、笑うに笑えないというのが本音だろう。


「別に俺が一から考えた訳じゃないですしね。 昔の仲間にマッドが付くような錬金術師が居たんですよ。 中世の時代に魔法科学で飛行機やらアンドロイドやら造ったじいさんの技術なんです」

結局先程から反応が消えた穂乃香達に横島は自分は普通だと言わんばかりにこれも他人の技術だと説明するが、穂乃香達からするとこの男は本当に自分を理解してないのだと呆れるしか出来ない。

なんというか横島の感覚は常人のものとは思えなかったのである。

そして穂乃香は娘である木乃香には、魔法の存在を教えたら真っ先に横島をしっかりと繋ぎ止めるように言い聞かせる必要があると心底思う。

そもそも男なんてきちんと捕まえておかないとふらふらと風に流されてしまう存在だと穂乃香は考えていた。

もし万が一にでも何かのきっかけで横島がメガロ側の女にでも惚れたらと思うと悪夢にしか思えない。


(信念や野心がない分だけ、敵に回る可能性もゼロじゃないわ。 女次第で本気で世界を敵に回すなんて冗談じゃないわよ)

今のところ横島は木乃香や明日菜を守る姿勢をとっているが考え方によっては、恋人でもない女性の為に本気で世界を相手にしようとしてる横島は野放しには出来ない存在に見えていた。

それは今も穂乃香や近右衛門を悩ます魔法世界の英雄と何処か重なるものがあった。

正直穂乃香は横島を甘く見ていたのかもしれない。

神々が地上に存在した世界でただ一人生き残った横島は最早常人ではないのだとこの時心底理解した。

そもそも穂乃香は自分達が決して正義を語れるような一方的に綺麗な存在だなどとは全く思ってない。

何事も絶対などということは有り得ないし、娘の幸せの為にも横島は必ず繋ぎ止める必要があると心に誓っていた。

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