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平和な日常~冬~3

そのままこの日の横島達はゆっくりとした時間を過ごしていく。

相変わらず持ち帰りのスイーツや箱菓子は売れるも、店でゆっくりと過ごす客が少ないので暇だったのだ。

まあそれでも夕方近くになると横島達と同じく暇な学生や、明日帰省する木乃香と夕映が来たりしてそれなりに賑やかにはなっていたが。

その後今日の夕食で木乃香や夕映ともしばしの別れとなり、やはり寂しそうなタマモは木乃香や夕映ときちんとした再会の約束をして見送っていた。


「お出かけですか?」

「ちょっと学園長先生に呼ばれててな。 悪いけど三人で留守番しててくれ」

そしてその日木乃香達が帰ると店を閉めた横島は出掛ける支度を始めてさよとタマモは不思議そうに見つめる。

滅多に一人で出掛けない横島だけに何処に行くのか二人も気になるらしいが、また近右衛門に呼ばれたと言われると仕方ないなという表情はするが反対まではしなかった。

まあタマモは本音では一緒に行きたいようではあるが、日頃から一緒に連れて行ける時は連れて行ってくれるので一緒に行けない時はお仕事だからとさよに教えられていて我慢してるらしい。


そんな二人に見送られた横島は車で近衛邸に向かうが、この日横島は近衛家と雪広家と那波家の三家による会合に出席するために近右衛門に呼ばれていたのだ。

表向きは近右衛門が横島に出張料理を頼んだことになっていて、これに関しては店に正式な形で依頼が来ている。


「どうも、皆さんもう来てますかね?」

「まだ来てないわ。 キッチンはこっちよ」

近衛邸に到着した横島は前回と同じく穂乃香に出迎えを受けて中にはいると、さっそく厨房に向かい料理の準備を始める。

まあ料理と言ってもこの日は鍋料理の予定であり手間のかかる仕込みは店で済ませており、後は野菜などの具材を切って鍋で煮込むだけであった。


「今日はいい蟹が市場にあったんで蟹鍋にしようかとも思ったんっすけど、話し合いには向かないかと思ったんで水炊きにしました」

「私も時々しか参加しないけど普段から簡単に済ませてるから本当に簡単なものでいいのよ」

一応料理を商売にしてる横島が来るということで会合で食べる簡単な料理をと頼まれていた横島だが、普段の会合では参加者が自分達で作っていたらしくあまり手の込んだ料理を作ることはないらしい。


「いや、簡単って言っても雪広会長達でしょう?」

ただ正直横島は事前に簡単でいいとは言われたが本当に普通のお手軽料理にする訳にはいかないと考えて、水炊きの食材などは結構いい食材を用意していた。

元々横島は生粋の庶民であり近右衛門達の会合の食事と言われるとドラマの悪徳政治家なんかが料亭で食べてるような食事をイメージしているのだ。


「いつもは女性陣で手早く作ってしまうのよ。 魔法協会の幹部クラスになると流石に知っているけど、一応極秘の会合だもの。 外から料理を頼んだり人を呼んだりなんて出来ないもの」

この日の会合の参加者は近右衛門と穂乃香に雪広家からはあやかの祖父である清十郎と両親である雪広政樹と妻、それと那波家からは千鶴の祖母である千鶴子と両親である那波衛と妻が全員参加らしい。

正直ここまで全員参加することは珍しいようで、普段は来れた人が簡単に料理を作っているようだった。


「へ~、そうなんっすか。 なんかイメージと違いますね」

「それと雪広君達はともかく、近衛家は正直さほどお金持ってないわよ。 不動産とか証券とか立場上売れない資産が多いし支出が収入より多いもの。 京都の近衛本家なんて雪広君達の密かな援助がなかったら破産してたわ」

そのまま横島は穂乃香に手伝って貰いながら調理をするが、穂乃香から聞かされた近衛家の現状には流石に反応に困る様子である。

おそらく土偶羅ならば知っている情報なのだろうが、横島は例によってそんな細かいことは知らなかったのだ。


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