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平和な日常~冬~3

「そろそろ風呂に入るか? タマモ」

その後も賑やかな時間は少女達の勢いと尽きることのない若さにより続いていくが、幼いタマモは二三日前から楽しみにしていた影響もあってか夜の九時を過ぎると睡魔に襲われ始めていた。

ずっと楽しみにしていたクリスマスに横島へのプレゼントを渡せたことで緊張感から解放されたのだろうが、瞳をトロンとさせながらも必死に睡魔と戦っている。

この楽しい時間を終わらせたくないとタマモ自身も必死なのだが、残念ながら妖怪とはいえ幼いタマモにはそろそろ限界のようであった。

日頃は夜も店の営業をしてるので時々しかタマモと一緒にお風呂に入れない横島はタマモをお風呂に誘う。


「私も一緒に入る!」

「あんたはダメよ」

「えー、なんで? アスナのケチ!」

「そう言う問題じゃないでしょ!」

正直横島としては特別な意図や狙いがあった訳ではないが、横島がタマモをお風呂に誘ったことで一人の少女に燃料を投下してしまったらしく桜子がさも当たり前のように一緒に入ると自然に立ち上がる。

そしてそれは当然ながら良識ある少女達を驚かせ明日菜に至ってはツッコミのような素早さで止めていた。

ぶっちゃけこれが美紗ならばまだ冗談として笑っていたかも知れないが、桜子の場合は本気でやりかねないと誰もが思ったのだ。

普段からも美紗の場合はある程度影響を計算して横島に触れるが、桜子の場合は狙いなのか無邪気なのか端から見てると区別出来ないとの事情がある。

流石に中学生にもなってタマモと同じテンションとノリで横島に抱きつくのは桜子だけだった。


「いっしょにはいるの?」

「えーと、今日は遅くなったし一緒お風呂に入るならもっと広いお風呂に行った時にしようね」

一方のタマモはお風呂に入ると寝る時間になることが嫌らしくすぐに返事をしなかったが、桜子の言葉に惹かれるものがあったらしく興味を示す。

やはりタマモの理想は横島も含めてみんなでお風呂に入ることらしい。

そんなタマモには明日菜を始め木乃香達もさよも困ったような表情を浮かべるが、最終的には明日菜がみんなで入るのは広いお風呂でと誤魔化すことになる。

ちなみにハルナなんかは入ってあげたらいいじゃないと他人事だと思って勝手なことをつぶやくが、すぐに木乃香達に口を塞がれていた。


「流石に中学生はなぁ。 葛葉先生くらい大人なら大歓迎なんだが…」

「私は入りません!」

そしてもう一人の当事者である横島はと言えば明日菜が桜子を止めると素直に笑っていたが、微妙に残念なようなホッとしたような複雑な心境も僅かに垣間見えている。

昔なら血の涙を流して喜んだだろうなと思うと残念な気持ちも多少はあるらしい。

横島はそんな心境を誤魔化すようにこの中で唯一の大人の女性である刀子ならと口にするが、突然話に引きずり込まれた刀子は素に戻ってしまい少女のように恥じらい強く否定する。


「そんなに嫌っすか」

「いやなの?」

「いえ、嫌とかそんな訳では…、私も恥ずかしいのよ」

そんなどこか初々しい刀子の反応を少女達は笑って聞いていたが、横島とタマモの二人はまるで示し合わせたかの如く揃ってガッカリした。

もちろん横島は悪ノリしていただけだが、タマモは本当にガッカリしてるだけにタチが悪い。

刀子は明らかにガッカリするタマモに横島の悪ノリに気づく余裕はなく、本音を素直に暴露してしまう。




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