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幻の初恋

次の朝

小竜姫はいつもの笑顔で異界の修行場から現れる


「さて、朝食の準備をしますか」

小竜姫は何事も無かったかのように朝食の準備に向かう


そしてお仕置きを受けたヒャクメは…

疲れきった表情で失神していた


朝食が出来る頃、老師やジークが起きて来る

「老師、3日間ゲーム禁止ですからね」

小竜姫は何食わぬ顔で現れた老師にニッコリ微笑む


「ワシは何もしとらんのだが…」

老師はとぼけているのだが、小竜姫の目が光る


「ヒャクメが覗いたのを、知ってて見逃したんですよね? 同罪です」

小竜姫の有無を言わさぬ笑顔に老師は黙って頷く


(うーむ… 妙な迫力だけ成長したな)

老師は弟子の成長を感じため息をつく


「ジークさん、パピリオを起こして来て下さい」


小竜姫に頼まれたジークはパピリオの部屋へ向かうが、何故か居ない

洗面所なども探すが見当たらなかった


「パピリオは部屋に居ませんでしたよ。 何処に行ったんでしょう?」

ジークは困った表情で台所に戻って来る

「変ですね… パピリオが自分から起きるはずは無いのですが…」

小竜姫は突然顔色が変わり走り出す!


「どうしたのでしょう?」

ジークは驚いた様子で老師に尋ねる


「さあの…」

さすがに老師も理解出来ないらしく首を傾げる



小竜姫が向かったのは、ゲートで繋がった横島の部屋であった

そこでは横島が気持ち良さそうに眠っている


「横島さん…」

小竜姫はしばし全てを忘れて横島の寝顔を見つめている


「はっ! 忘れるところでした!」

小竜姫は横島の無防備な寝顔に、目的を忘れそうだった

気を取り直して横島の布団を見ると、何故かお腹の辺りが盛り上がっている


「まさか…」

小竜姫は震える手で横島の布団をはぐ


バサッ!


そこには…、横島のお腹の上で眠るパピリオが居た


実は昨日、ベスパ達を送った後

パピリオは小竜姫が修行場に入るのを待って、横島の部屋に行ったのだ

しかし横島はすでに眠っていた為、勝手に布団に潜り込んでいた


「パ~ピ~リ~オ~」

小竜姫は嫉妬の炎を瞳に宿してパピリオを持ち上げる


「うーん… まだ眠いでちゅ…」

パピリオは寝ぼけてつぶやく


「おーきーなーさーい!!」

小竜姫の怒りの声が部屋に響く


「う…ん!? 小竜姫!」

パピリオが眠い目をこすって目を開けると…

怒りの表情の小竜姫に捕まっている


「おっ…おはようでちゅ」

パピリオは引きつった笑いで誤魔化す


「パピリオ… よくも私の横島さんと… 私もまだ一緒に寝てないのに…」

小竜姫は怒りで震えている


数百年も初恋の相手を探し続けた小竜姫

彼女は一途な分、嫉妬深いようだ


「痛いでちゅ! 小竜姫! 腕が潰れるでちゅ!」

パピリオは暴れ出すが、逃げられるはずがない



その時横島は…


(これは夢だ… これは夢だ… これは夢だ… 本当の俺は暖かい布団で眠ってるんだ)


どうやら、目の前の修羅場を夢と思い込もうとしているようだ
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