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新しき絆

美智恵はそんな令子やおキヌにため息をつく

「令子、もっと常識を学びなさい。 横島君はあなたの事務所で働くアルバイトよ。 なぜ彼の私生活に口出しするの? あなたが邪魔しなければ、横島君にはとっくに彼女が居ても不思議じゃないわ」

美智恵は少し睨みつけて令子を見る


「あんな野獣のような奴を野放しに出来る訳無いでしょ!?」

令子はさも正義感のように言い放つが…


「あなたは何の権利で横島君を縛りつけようとしてるの!」

美智恵はより強い口調で令子に返す


「あいつは私の丁稚なのよ! 権利も自由もあいつには無いの!」

令子はムキになって美智恵に怒鳴る

最早会話にならない台詞しか言えない令子に、美智恵は白い目を向ける


「あなたとは話すだけ無駄ね。 おキヌちゃん、本当に好きなら待ってるだけじゃダメよ? いつまでも令子に気を使ってる必要無いわ」

美智恵は令子を無視しておキヌに語りかける


「でも…、私は……」

おキヌは決断出来ない

おキヌも令子と同じく、かつての事務所を変えたくないのだ

令子のワガママ放題を、横島が犠牲になり自分が慰める

そんなかつての日々から抜け出せない


「ごちそうさま…」

タマモは自分は関係無いといったふうに食卓を離れる


「タマモちゃんは横島君にチョコはあげないの?」

美智恵は部屋を後にしようとするタマモを呼び止める


「私は人間の風習に興味無いわ… 横島には世話になってるけど、別にチョコで返す意味も無いし…」

タマモは美智恵を見ぬまま、そう話して部屋を後にした


「ごちそうさまでござる!」

シロは食べ終えるとそのままタマモの後を追った


(タマモちゃんは相変わらずね… まあ、いいわ)

美智恵は、タマモにはあまり動かないで欲しい為、そのまま見送る

シロは言わなくてもあげるだろうが、子供なシロでは役に立たない為、こちらもそのまま見送った


「あなた達はよく考えた方がいいわよ。 横島君が一生あなた達の側に居るかなんてわからないんだから… あれだけ優秀なGSなんだからいずれ独立するだろうしね…」

美智恵は現実を見ない2人にキツく言って食事の後片付けをする

令子は不機嫌なまま再び寝室に戻って、おキヌは悩みながらも学校へ行く準備をする


(令子もおキヌちゃんもダメね… 自分達だけ幸せな価値観や環境を押し付けてるわ。 横島君を見てない。 彼が恋人を望んでも2人共答えない。 それなのにヤキモチを焼き、横島君に近寄る女の邪魔をする… あれじゃあ、誰だって逃げるわね~)

美智恵はあまりに恋愛下手な娘と、それに影響されたおキヌをどうするべきか悩み苦慮する


あの2人にとって、今まで3人一緒に過ごした日々がそれだけ幸せだったのだろう

だが、横島は必ずしも幸せで無い

最低限の給料も払わない上に、虐待や束縛が酷い

人間らしく、高校生らしい幸せや生活を犠牲にして彼女達を支えて来た


美智恵はそこまで考えて、再びため息をつく

今日何回目かわからないため息を…


(今しか無いのよ… 今あの2人を引き離さないと、令子には二度とチャンスが巡って来ない)

美智恵はまだ諦めて無い


(横島君は浮気症だし、おそらく魔鈴はその辺我慢出来ないわ。 今ならまだあの2人に楔を撃ち込める)

美智恵はそう考えてすでに次の手段を考え初めていた


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