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平和な日常~冬~3

その頃図書館島の地下深くにある住み処では、アルビレオ・イマが一人で紅茶を飲んでいた。

先程穂乃香にあれほど責められたがそんなこと気にする様子もなく、微かな笑みすら浮かべる余裕がある。


「キティといい穂乃香さんといい、よほど彼がお気に入りなようですね」

アルはエヴァの解放を素直に喜んでもいたが、同時にずっと気になっていた相手にようやく会えたことも喜んでいた。

そもそも彼は普段は遠見の魔法により外部の情報を得ているが、そんな魔法で見れない人物や場所は麻帆良には意外と存在する。

基本的に遠見の魔法はある程度離れた場所を見れるが、相手が高位の魔法使いなら相手を特定までは出来なくとも見られてることは感じることが出来るし、見られることを妨害するのは一般の魔法使いでもさほど難しいことではない。

実は遠見の魔法を妨害するマジックアイテムは一般の魔法使いでも買えない値段ではないため、特に女性の魔法使いならば割と持ってることが多く。

加えて麻帆良の建物にはその手のアイテムで建物全体を見られないようにしてる建物も多い。


「つれなかったことは少し残念ですが、まあ今日はこれでいいでしょう」

横島の場合は自宅と店がある建物の中は土偶羅が異空間アジトから妨害をしてるので常時見えないが、横島が外に居る時にはアルにもほとんど見ることが出来ていた。

そもそもアルは昔から明日菜を時々見ていたため、当初は横島に興味を持っていたというよりは明日菜を見ていた過程において興味を持ったに過ぎない。


「二枚目のジョーカーとは、あの子も運がいいというかなんと言うか……」

先程横島に対してはナイトという言葉を使ったが、アルはその本質をジョーカーではと疑っていた。

それはこの数ヶ月ずっと明日菜や横島を断片的にでも見ていた上での勘だったが、かつて魔法世界のジョーカーと言えたナギに助けられた明日菜が、今また新たなジョーカーに守られてることには少し驚きを持って受け止めている。

元々ナギはどちらかと言えば魔法世界よりも明日菜を優先して助ようとしていたこともあり、赤き翼とメガロメセンブリアとの対立の根源はその辺りにもあった。


魔法世界を新たなる理想世界に書き換えることが目的の創造主の残党も、魔法世界を解析して自分達の為の世界に書き換えたいメガロメセンブリア中枢も、そしてナギを助けたいアル自身も必要なのは魔法世界の現継承者であるアスナ姫なのだ。

そんな全ての鍵を握る存在の元に新たなジョーカーが現れたことは、再び歴史が動く前触れではとアルは考えている。


「最近の魔法協会の急激な動きの影に居るのは彼かも知れません。 さてはてどうなることやら」

何か予感めいたモノを感じるアルだが、最近密かにかつ急激に動く魔法協会と横島は何処かで関係があるのではと疑っていた。

残念ながら魔法協会の関連施設は遠見の魔法では見えないので得られる情報は限られてはいるが、人員を外などで見てればある程度の流れは知ることが出来る。

実は彼がエヴァの解放を知ったのも近右衛門が関係者に根回しをした際に、関係者の何人かが独り言や同じ関係者同士と遠見の魔法で見える場所で話していたからに他ならない。

結局アルは横島と横島を取り巻く環境に何か得体の知れないモノを感じるが、それに対しても彼はやはり傍観者のように見ているだけだった。



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