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平和な日常~冬~3

「世界を救うには必要な人だったんでしょうね。 噂に聞くサウザンドマスターは豪快な人だったようですし。 惜しむべくは性格が悪すぎることっすかね」

一方の横島も穂乃香が怒ったことは予想外だったが、お人よしや脳筋が多い赤き翼には必要な人材だったんだろうなと理解していた。

いわゆる考えはするが決断は自分でしなかったのだろうと思うと、もしかすると横島にとっての土偶羅のような役割に近かったのかもしれないと感じる。

綺麗事だけで世界が救えるほど甘くはないし、彼は赤き翼の頭脳であり負の部分を背負う存在だったのだと考えると正直何とも言えない心境になる。

今回の件に関してももしかするとあえて嫌われることで横島やエヴァの関心を自分に向けて、最終的には横島わエヴァを巻き込みナギを救う方向に持ち込みたいのではとも考えられるのだ。

そういう意味では嫌われ役をあえて演じてるのかもしれない。

ただしアルの性格の悪さと神経の太さは元からあったのだろうとも思うが。


「豪快? 違うな。 何も考えてない、ただの馬鹿だ」

「そうじゃのう。 奴にとっては戦争を止めることはケンカを仲裁する程度の認識しかなかったじゃろうな」

相変わらず面倒くさそな横島のアルの評価を近右衛門達は否定することはなかったが、代わりにナギのことを豪快だと言ったことを否定していた。

特にエヴァはナギは豪快などではなくただの馬鹿だと言い切り、近右衛門ですら同意したのだからよほどなのだろう。


「馬鹿じゃないと世界なんて救えませんよ。 多分……」

一言で言えば面倒くさい連中なんだろうなと、横島はかつての仲間達を思い出しシミジミと語る。

それはどこか言葉以上に説得力がある一言だった。

面倒くさそうな表情だった横島は、少し面白そうに笑い出すとぽつりと消えゆくほど小さな声でそう呟いた。

そんな横島の言葉と表情に近右衛門と穂乃香はその過去にはまだまだ秘密があるのだろうと感じ、エヴァとチャチャゼロもまた横島の過去に僅かだが興味を抱くことになる。


「それでは始めるとするか」

そして予定外だった厄介者の介入に一区切りが着いたことで、近右衛門はいよいよエヴァの解放の魔法を始めることにした。

解呪魔法自体は事前にエヴァから伝えられており、横島はもちろんのこと近右衛門と穂乃香もそれぞれにできる範囲で最低限の練習やシュミレーションはしている。

後は複数の人数で術式を構築することで三人の息が合うかがポイントになるが、それは親子である近右衛門と穂乃香に問題はなくどちらかと言えば横島次第と言えた。


「貴様本当に大丈夫なのか?」

「心配すんなって、こう見えても魔法や呪術なんかは結構得意なんだよ」

ちょうど世界樹の真下に到着したエヴァは少し離れて準備をする近右衛門・穂乃香・横島に改めて視線を向けるが、やはりエヴァは横島がイマイチ不安に感じるらしい。

思わず疑うような声をかけるが、横島は隣でチャチャゼロを抱えるタマモの頭を撫でつつ大丈夫だと笑っている。


「では始めるぞ」

そしていよいよ本番になり、緊張感ある表情の近右衛門がメインで穂乃香と横島はどちらかと言えば近右衛門をサポートする役割だった。

長々と呪文を唱える横島達三人を、エヴァとチャチャゼロはただ無言のまま見つめるしか出来なかった。



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