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神と人と魔の狭間で

「横島君、少し頼みがあるんだが。」

元始風水盤の問題を棚上げにした小竜姫達は食事とショッピングを楽しむが、女性陣が下着の店に入ると流石に男性陣は入ることなく近くのカフェで待つことにしたがそこで深刻な表情をした唐巣が横島に声をかけていた。


「なんすか?」

「小竜姫様に元始風水盤のことも考慮して頂けるように君からも少し頼んで欲しいんだ。」

いつメドーサが現れるか分からぬ香港でもリラックスした様子の小竜姫や令子達であるが唐巣は小竜姫が香港を見捨てると発言したことを重く受け止めていて、万が一西条が説得に失敗した場合に備えて横島からも小竜姫に頼んで貰いたいと考えたらしい。

現状で小竜姫の意思を変えられるのは小竜姫が信頼する令子か恋人の横島しか居なく、令子は無理だと判断して横島に頼みたいようだが肝心の横島の表情も何とも言えぬまま唐巣を見つめる。


「小竜姫様も美神さんも最初から見捨てる気はないと思いますけど?」

「それは私も理解している。 しかし……。」

「そもそも香港の人達が何にもしないのに何で小竜姫様にやらせようとするんっすか? それで小竜姫様に何かあればどうするんです?」

横島も唐巣が言いたいことは十二分に理解はする。

しかし横島にとって大切なのは小竜姫や令子達が無事に仕事を終えることであり、あれもダメこれもダメと何にもしない香港のことははっきり言えばどうでも良かった。


「横島君……。」

そんな横島にこの時唐巣は彼もまた本気で小竜姫のことを何より大切に想っていることを理解した。

もちろん唐巣も筋違いなのは重々承知しているが、現状でメドーサを相手に香港を救うには小竜姫にすがるしかないかもしれないと考えていたのだ。


「美神さんがよく言うことっすけどGSは人助けじゃない。 その言葉、今ならよく分かる気がします。 俺は小竜姫様の力にはなりたいですけど香港はどうでもいいっすから。」

唐巣は本当に立派でいい人なんだろうなと思う反面、小竜姫を不要な危険に巻き込むのかと思うと横島は気に入らなかった。

小竜姫はメドーサの専任捜査が任務であってメドーサから人間を守ることは任務ではないのだから。


「説得する相手が違うんじゃないっすか?」

いつの間にか雪之丞・タイガー・ピートのみならずカオスやマリアも横島と唐巣のやり取りを見ていて、そこだけ少し異様な雰囲気になっていたが横島は唐巣が相手でも遠慮することなく自身の意見を口にする。


「そうだね。 君の気持ちも考えずに無神経なことを言って済まなかった。」

横島の言葉は唐巣の胸を打つには十分だった。

小竜姫にもまた愛する者が居て帰りを待つ者が居る。

当たり前の事実を唐巣は知らず知らずのうちに見過ごしていたのだ。

やるべきことを何もせずに小竜姫の怒りを買った香港の当局ではなく小竜姫を説得しようとした唐巣に横島が不快感を示したのは当然だと、唐巣は己の一方的な見方に恥じてしまい力なく無言になってしまった。


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