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平和な日常~冬~3

以前から度々説明しているが、大戦の真相やその後の世界を鑑みるとアリカと赤き翼は戦後処理に失敗したと見られている。

ただその点に関してはまだ十代だったナギや堅物の詠春に細かいことに興味がないラカンなどは話にならないし、アリカですら若さ故にきちんとした政治的な判断が出来たとは言えなかった。

そんな赤き翼のメンバーで戦後の行動とその危うさに気付けた人間は、アルとガトウしか居ないというのが穂乃香や近右衛門の見立てである。

特に一番長き時を生きるアルは、是が非でもナギの間違いを正すべきだったと穂乃香はずっと考えていた。


「これだけは覚えておいて。 もし貴方が無関係なこの国の人間やあの子を歴史の闇に連れ出そうとするなら私が絶対に許さない。 東西の魔法使いを総動員して貴方と貴方が守るモノを叩き潰すわ」

怒り心頭の穂乃香は木乃香には決して見せないほどの殺気を露にしてアルを睨みつける。

そして万が一の時にはアルのみならず彼が守るモノすら叩き潰すと言い切った穂乃香の決意は本物だった。

その決意と強さは母親として絶対に引けぬ一線があることに、アルはもちろんのこと横島やエヴァですら気付いている。


(厄介な奴だな。 今のうちに始末するべきか?)

一方横島は穂乃香の姿に、ふと自身の母である百合子や美神美智恵のことを思い出していた。

原因は安易に半生の書を作ろうとしたことだが、アルの危険性は横島よりも穂乃香や近右衛門の方が理解してるのだろう。

傍観者か策士かは知らないがこの男の性格と過去や超鈴音の歴史を見ると、放置するのは危険ではないかと横島ですら思うのだ。

ただ実のところ世界の行く末に興味などなく、気に入った存在に力を貸すアルの姿は意外と横島と重なる部分も多い。

横島自身はあまり世界に関与などしたくはないが、自分と周りの人々の幸せを守る為なら躊躇はしないだろう。

それに秘密結社完全なる世界を利用しても平然としてる横島は間違ってもアルのことは批判出来なく、ある意味同族嫌悪のような感情があるのかもしれない。

正直横島もいつかアルを上手く使えないかと、カードの一つとも考えているので本当に似たようなものだったが。


「少しふざけ過ぎたようですね。 本題はエヴァンジェリンの解放を検討してると聞き心配して来たのですが」

「貴様の手は借りん。 さっさと失せろ」

結局穂乃香が本気で怒ったことで流石のアルも少し申し訳なさそうな表情をしてようやく本題に入るが、エヴァはアルの協力など必要ないからと一言で突き放してしまう。

最終的にアルはそのまま姿を消してようやく落ち着くが、何とも後味の悪い感じだった。


「悪い奴ではないんじゃがのう」

「あの男に借りを作るのはごめんだ」

予期せぬことで時間をロスしたが、一言で言えばタチが悪いという言葉が全てかもしれない。

エヴァに関しては文句を言いたいこともまだまだあったようだが、予期せぬタイミングで穂乃香が本気で怒ったことで冷めたようである。


「横島君、何かあったらうちの人に遠慮しないでいいからね」

そして本気で怒っていた穂乃香に関しては、手を出さないで収めたがやはりあまり信用してないらしい。

横島に対しても万が一の場合は好きにしていいと言い切る辺り、本当に心配してるのだろう。



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