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平和な日常~冬~3

そのまま通路を歩くこと十五分ほどで一行は目的地である図書館島の最深部である、かつて魔法世界への転移ゲートがあった場所にたどり着く。

そこは世界樹の真下でもあり麻帆良で一番魔力が高い地点でもある。


「へ~、ここが封印されたゲートっすか」

すでに二十年近く前にゲートが封印された為、まるで廃墟のような寂しさを感じる風景がそこにはあった。

この場所に初めて来た横島とタマモは物珍しそうにキョロキョロと見渡しているが、近右衛門は表情がいま一つに見える。

正直このゲートには思い出したくもないことが山ほどあるのだろう。


「そういえばエヴァよ、アルビレオには会って行くか?」

「いらん。 顔も見たくない」

そんな横島とタマモ以外はほとんど表情を変えずにゲートのある中心部へと歩みを進める一行だが、近右衛門はふと思い出したかのようにアルビレオ・イマに会って行くかとエヴァに問い掛けた。

ナギ・スプリングフィールドと最も近い仲間だとも言われるアルビレオ・イマについては、詠春からナギの現状を聞いた時に麻帆良に図書館島の地下に居るとは聞いたがエヴァから会う気はなく今までは会ってないし今回も会う気はないらしい。

ナギの結婚について隠されていたことが面白くないこともあるのだろうし、正直そこまで信用されてなかったと考えると興味すら失せていた。


「本当はアルビレオを三人目にしようかとも考えたんじゃがのう」

エヴァと数少ない親交があったアルビレオ・イマに対して怒りも興味もあまりなく拒否するエヴァに近右衛門は複雑そうな表情を見せつつ、実は三人目の有力候補だったと告げる。

何処かの魔法組織に深く関わる人間ではなく高位の魔法使いというのはなかなか居るものではないし、いろいろ厄介な性格だが少なくともエヴァを利用はしないだろうということで三人目としては有力候補だった。

ちなみに他にはネギの祖父も一応候補には上がっていたが、彼は現在も監視付きの生活を送っており密かに麻帆良に来ること自体が無理なのでボツになったたが。


「近くまで来たなら顔くらい見せに来てくれればいいのに。 冷たいですね。 古き友エヴァンジェリン」

「チッ!」

近右衛門にとってアルビレオ・イマは個人としては悪い印象はないが、組織のトップとしては正直あまりいい印象がない。

その理由としてはアルビレオ・イマは魔法世界寄りの考えを持ってることもあるが、根本的にアルビレオ・イマの行動原理は特定の気に入った個人の為にしか動かないことだろう。

現状で彼は結局はナギの為にしか動かず、その為ならば他の何かを犠牲にもしかねないのだ。

そんな近右衛門が噂をしたからではないだろうが、エヴァが突然何かを感じたかのように舌打ちすると自分の前を睨むと現れたフードを被ったアルビレオ・イマが現れる。


「貴様になど用はない。 消えろ」

「用ならありますよ。 私にはナギがやり残したことは見届ける義務があります。 それと、貴方は何故そんな嫌そうな顔をしてるのですか?」

目の前に現れたアルビレオ・イマにエヴァはあからさまに不機嫌そうに変わり軽く苛立つが、アルビレオ・イマはそんなエヴァに胡散臭いと言わんばかりのにこやかな笑顔を見せる。

そして横島は麻帆良で一番会いたくなかった人物が現れたことで、心底面倒くさそうな表情をしていた。



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