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平和な日常~冬~3

それから数日が過ぎたクリスマスイブのこの日は、ちょうど麻帆良学園の小中高の大半では二学期の終業式の日であった。

クリスマスや冬休みを楽しみにする生徒達の心を現したかのように麻帆良の街は明るい雰囲気に包まれていたが、そんな楽しげな雰囲気とは無縁な人々も当然存在する。


「学園長先生、終業式で挨拶とかしないで大丈夫なんっすか?」

「各学校に校長がおるので終業式と始業式は基本的に任せておるよ。 参加したりしなかったりするといろいろと煩くてのう」

ちょうど木乃香達が終業式を始めようとしている頃、横島はタマモを連れて近右衛門・穂乃香・エヴァ・チャチャゼロと図書館島の地下に来ていた。

実はこれから横島達はエヴァの呪いを解くことになっているのだ。

例によって横島側からの情報提供でここ最近は例年の数倍は忙しかった近右衛門だが、エヴァの呪いを解く件は穂乃香が麻帆良に居る時でなくてはならないので今日のこのタイミングになっている。

横島自身はこのタイミングについて近右衛門が終業式をサボっていいのかと不思議そうだったが、麻帆良学園には幾つもの学校があるので近右衛門は個別に終業式や始業式には必ずしも出てないようだった。


「としょかんのちかはすごいんだよ! きけんがいっぱいなんだから」

「オ前ハ本当ニ何処デモ散歩に行クンダナ」

一方のエヴァはようやく呪いから解放されるというのに、表面的にはいつもと変わらぬ表情であり少し眠そうなくらいだ。

まだ自分では動けないチャチャゼロは散歩の時のようにタマモが抱き抱えて歩いていたが、これはチャチャゼロを連れて行きたいと言い出したのがタマモなので当然だろう。


「ところで彼女に説明はどこまでしたの?」

「エヴァちゃんの身体を治すとしか伝えてませんよ。 タマモにとって大切なのはそこだけですから」

図書館島で近右衛門と穂乃香と待ち合わせした横島は、エヴァとチャチャゼロと一緒に来てエレベーターで地下に下りて通路を歩いていた。

日頃図書館探検部で歩く場所と違い、現在歩いてる通路は近代的で照明は元より非常灯や防火シャッターなんかもある。

無言で歩くエヴァの横をタマモがチャチャゼロを抱えて歩いているが、横島は近右衛門と穂乃香と一緒にエヴァ達の前を歩いていた。

正直近右衛門も穂乃香もまさか横島がタマモを連れて来るとは思わずに驚いていたが、肝心のエヴァが何も文句を言わない以上二人が何か言うことは出来ない。

ただ穂乃香は幼いタマモに見せるモノではないと少し心配してる様子ではあるが。


「タマモはエヴァちゃんが苦しんでるのを理解してますからね。 その苦しみから解放されたことを教えないと心配するんっすよ」

まあ横島は横島なりに理由があってタマモを連れて来たのだが、近右衛門は特に気難しいエヴァと普通に楽しげに話すタマモに驚きを感じていた。

以前近右衛門がエヴァの家に行った時に偶然タマモが来た時にも驚いたが、改めて考えると本当に不思議であった。

もしかすると麻帆良の未来の鍵を握るのはタマモではと、半ば本気で考えるほどタマモの交遊関係は凄かった。


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