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平和な日常~冬~3

さてその日も夜になり木乃香達が帰ると、入れ代わるように刀子と鶴子と刹那が店を訪れていた。

どうやら鶴子が刀子と刹那に修行をつけていたようでその帰りに寄ったらしい。


「そういえばお嬢様の件はどうなったのですか?」

例によって夕食は横島達と同じ鍋物だった三人は冷えた身体を温めるように食べ始めるが、刹那はずっと気になっていた木乃香に魔法の存在を教える件について尋ねる。

以前に鶴子からその件について聞かされて以降、刹那もいろいろ考えていたが今だに答えは出てない。

ただ木乃香に魔法の存在を教えるならば、その時期が穂乃香が麻帆良に居る内か木乃香が京都に戻る年末年始の帰省中なのは考えなくても分かる。

刹那は自分がどうするべきか答えが出ずに焦っていた。


「その件は少し事情が変わったのよね。 横島君が非公式ながら協力してくれることになったから」

悩み焦りの見える刹那の姿に刀子は鶴子に視線を送り前回の時から事情が変わったことを説明し始める。

ちなみに横島に関しては非公式に協力するということが、東西の魔法協会の内部に伝えられる形になっていた。

非公式というのは魔法協会に所属しないが協力するということであり、事実上近右衛門の子飼いになるような扱いである。

この対応に関してはやはり横島が木乃香に近すぎることから正式に関東魔法協会に所属させるとバランスを取る為に関西からも人員を派遣せねばならなくなるが、横島の近辺に下手な人員を置くと秘密保持の邪魔にしかならないので穂乃香の同意の元で近衛家が直接雇用する形に落ち着いていた。

現状では木乃香の私的な護衛というのが横島の立場となったが奇しくも学園主催のクリスマスパーティーで目立った結果、将来的には近衛家の婿入りを前提にした下地作りか将来の幹部候補としての下積みかと見られることになる。


「では情報開示は当分先に?」

「それがまた微妙でね。 結論から言えばお嬢様への情報開示は時間の問題よ」

「刹那も分かるやろうが、これ以上隠してもお嬢様の為にならんのや。 東西の魔法協会にこの先も近衛家は必要な存在や。 将来的に何も知らんことで苦労するのはお嬢様やから」

元々木乃香への情報開示は安全面からの話であった為、横島の協力で事情が変わったと聞いた刹那は少しホッとした表情を見せた。

だが刀子は残念ながら流れはさほど変わってないと告げて、今まで無言だった鶴子はこれも定めだと刹那に言い聞かせるようにゆっくりと語っていく。

横島が近右衛門に協力したことで木乃香への魔法開示の件は一から検討し直しになったが、近右衛門と穂乃香は開示する方向性であまり変わってない。

まあ問題が本当に木乃香の安全面だけならば違ったのだろうが、横島の協力により魔法世界の限界まで知ってしまった以上はそうも言ってられなくなった。

将来的な木乃香の立場や地位はともかくとして、今からでも木乃香には最低限の魔法使いとしての教育が必要だというのが近右衛門と穂乃香の共通認識である。

ただ今だに本決まりにならないのは、木乃香の交遊関係や周辺人物をどこまで取り込むかや、明日菜の扱いなどいろいろ考え調査や調整する問題が多かった件であった。

実際には夕映やのどかを始め美砂達までも、候補として両親や親族の調査が行われている。

尤も美砂達に関しては魔法協会側には取り込むメリットはあまりないが、横島と木乃香の周囲に近すぎるので下手に隠すと禍根を残したり秘密を嗅ぎ付けて問題を起こす可能性も高いので取り込む検討がされていた。

加えて同時にあやかと千鶴への情報開示も同時に検討しており、近右衛門と穂乃香は万が一を考え木乃香が本当に信頼出来る次世代を育成したいと検討している。



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