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その二

翌日にはかおりの祖父が闘竜寺に父との話をするために行ったが、父は言葉少なにかおりと母がしばらく実家で暮らすことを了承したというか好きにすればいいと答えただけだった。

祖父はあまりに不器用そうな父に迎えに来るなら早い方がいいと助言を少しするも、父は自分にはその意思はないと答えるだけである。

結局母とかおりの荷物を近いうちに取りに来ることを伝えたが会う気はないらしい。

正直祖父から見て父は他人であり血の繋がった娘の方が可愛いし心配にもなるが、孫のかおりの為にと助言したが全く聞く耳を持たない父にしばらく別居でもして苦労をした方がいいと判断したようだった。


「お母さんと一緒に家出した!?」

一方のかおりは翌日には電話番号を教えていたクラスメートや学校には訳あってしばらく連絡先が変わるからと告げて母の実家の電話番号を教えていたが、放課後には横島に会って事情を話し相談していた。


「家の親も前に親父の浮気がどうのこうのって言って離婚するからって家出して日本に帰って来たけどな。 ただ親父が迎えに来たらすぐに帰ったぞ。」

ただ今まで父が絶対的な家庭で育ち家出したことが初めてのかおりと、良くも悪くも母である百合子が絶対的な家庭で育った横島では価値観がまるで違う。

横島家に関しては少し一般的と言いがたい部分があるが両親が恋愛結婚で今も仲がいいというのが根底にあるのに対して、弓家は見合い結婚であり家と寺を存続させる為の家族という認識の父なので根底に深い愛情があるかと言われると少々微妙だった。

まあかおりの父も決して悪い人間ではなく自身も日頃から質素倹約に努めているし、浮気や飲みに行くなんてことはない誠実な人間ではある。

しかし自身が真面目であるが故に妻や娘にも同じことを強要するなど、家庭人としては正直微妙としか言えなく一緒に居ると息が詰まるというのが周りの人間の本音だ。

対する横島の父である大樹は遊びも浮気もするが家庭を大切にしていて家庭サービスなども欠かさない人間だった。

浮気は事実上百合子も黙認してる状態であり、人様を不幸にしたり迷惑をかけたりしない限りは問題視してない。

このあまりに違う父親と家庭の価値観を理解するのに二人共に苦労することになる。


「すぐに親父さん迎えに行くだろ?」

「いえ、父は絶対に自分では迎えに来ないと思います。 プライドが高い人ですから。 闘竜寺と弓式除霊術を存続させることが全てな人なんです。」

「親父さんの趣味は?」

「趣味はありません。 酒もタバコもしませんから。」

かおりとしては横島に父というか男性の心境を教えて欲しかったのだが、横島と父では人間としてあまりに違いすぎるので説明をすればするほど横島は全く理解できないようで不思議そうにポカーンとしてしまう。


「寺ってそこまでしないとやってけないのか? 俺は宗教は知らんが唐巣神父なんかは貧乏だけどもっと自由だぞ。」

「父は闘竜寺と霊能の修行以外知らない人なんです。 檀家とのやり取りもほとんど母にやらせてましたし。」

そして名門だと言われてる闘竜寺の厳しい現状に唖然としてしまい、横島が知る数少ない宗教家である唐巣と比べて益々理解できないようで考え込んでしまった。

そもそも横島が知る仏教は神族である小竜姫が帰依してる宗教だとの認識であり、少々生真面目で堅物ではあるがそこまで厳しくする必要があるのか分からないのだろう。





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