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平和な日常~冬~3

お昼時になると店は近所の主婦やサラリーマンにOLなどでそこそこ賑わっていた。

現在では食事が美味しい喫茶店としてそれなりに知名度がある横島の店だが、周囲は住宅街なので基本的には横島一人でなんとか対応出来るレベルである。

と言っても一人で接客から調理までするのは決して楽ではないし、タマモも注文を聞くことなど出来る範囲で手伝っているのでなんとかなってると言えるが。

ただ幸いなのは客のほとんどが日中は横島一人しか居ないことを理解しており、多少料理が出て来るまで時間がかかっても文句をつける人が居ないことだろう。

別に周囲に飲食店が全くない訳ではないので、手早く食事を済ませたい人は別の店に行くことが多い。

従って最近の横島の店に昼食に来る客は、時間に余裕のある主婦やサラリーマンやOLが中心であった。



「うわ~、今日は猫のキャラ弁ね」

一方女子中等部では木乃香達が教室で昼食にしていたが、さよが弁当を開けると周りに居た少女が感心したような声を上げる。


「よく毎日続くわよね」

「ってか最初の頃より難易度上がってない?」

二学期に入ってから横島が始めたさよの弁当作りだが、当初から話題にはなっていたが今だにそれは地味に続いていた。

基本的に興味のないことは他人任せの横島だが好きなことは凝り性であり、さよの弁当はそんな横島の性格が見事に反映された形になっている。


「横島さん自分の好きなことは徹底的に凝るんや」

さよの周りには美砂達やまき絵達や超と五月まで加わりお弁当チェックをするが、特に超と五月は横島から何か新しい技術を盗もうと割と真剣な様子であった。

実際横島の作る弁当は見た目からして華やかであり結構手間をかけてるので、木乃香ですら朝から同じ弁当を作るのは時間的に無理だと公言していた。

最初はさよが恥をかかない為にといろいろ気を使っていた弁当だったが、途中から横島自身が弁当を作るのが楽しくなりどんどん懲り出したのだからある意味横島らしいと言えるだろう。

限られた弁当箱のスペースの中に毎日食べる為に飽きない味や栄養のバランスは元より、見た目をどう表現するか考えてるうちに楽しくなったらしい。


「マスターって、やっぱり人とズレてるねよねー」

元々横島が弁当作りはさほど経験がなく特に女の子の弁当は分からないからと、当初は主婦向けの雑誌や木乃香達に意見を聞きながら作っていたがこの数ヶ月で横島の弁当作りの腕前は確実にレベルアップしている。

出会った当初から料理や弁当作りの腕前は高かったので今まではあまり感じなかったが、二学期に入って以降のさよの弁当を毎日見ると横島はこうやって料理の腕前も上げたのだろうと新たな誤解が広がっていた。

ただ普通は二十歳そこそこの男性が可愛い弁当作りに嵌まるなどなかなかあることではないので、やっぱり横島は変だと少女達はシミジミと感じる。

まあ別に悪いことではないのだが、結局のところ自分の好きなことを好きなようにやりたいだけの横島は、見た目や行動以上に本質が子供っぽいのだと周りに気付かせることになるが。



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