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平和な日常~冬~3

「年末年始の予約が五割増ね」

「流石にクリスマスは今からでは無理なのでお断りしてます。 ただその分だけ年末年始の忘年会や新年会のパーティー向けの予約が増えてますよ」

学園主催のパーティーから数日が過ぎたこの日、クリスマスを間近に一年で一番忙しい日々を送っていた新堂美咲は、スタッフ達とここ数日急激に増えた予約への対応を話し合っていた。

それと言うのもあのパーティー以降、新堂の店には新規の客からの予約が次々と舞い込んでいる。

中にはクリスマスケーキが欲しいとの問い合わせも多かったが、元々人気店だった新堂の店では随分前に予約は締め切っており不可能だった。

その代わりという訳ではないが、企業の忘年会や新年会のパーティー用にとスイーツの大量注文の予約が結構入っている。

新たに予約が増えたのは麻帆良派の企業がほとんどで、一件一件の注文数が多いのが特徴だ。

取り分け特徴的な予約は雪広家からの新年会パーティーのスイーツ大量注文であろう。


「年末年始も何人か臨時アルバイト雇わなきゃ無理かしら?」

「そうですね。 普通はクリスマスが終わると落ち着くはずなんですが……」

新堂の主な相談相手はチーフパティシエの高橋だったが、店で一番の経験者でもある彼ですら突然の大型予約の増加には驚いている。

幸いなことは新堂が麻帆良学園のパティシエ専攻の生徒達に顔が利くので、専門職ながら臨時のアルバイトを雇うのに苦労しないことか。

正直無理をして品質を落としてまで予約を受けるつもりはないが、今の状況が新堂にとってチャンスであることに代わりはない。


「彼のおかげと言うべきかしら? 近衛さん達の苦労がわかるわね」

「まさかうちが影響受けるとは……」

突然の予約増加の原因は考えるまでもなくパーティーで横島が新堂を絶賛していたからだろう。

実際パーティーでは新堂も多くの企業の経営者と挨拶したが、まさかここまで急激な影響が出るとは思わなかったらしい。

先日まで横島の影響で名を上げていた木乃香達と話す機会も多くいろいろ話を聞いていただけに、新堂やスタッフ達は木乃香達の苦労を身を持って知った形になる。


「向こうはそれほど影響ないみたいですけどね」

今回のパーティーの影響は横島と木乃香には意外と直接的な影響は少なく、新堂が一番直接的な影響を受けた結果となっていた。

木乃香の評価に関しては、正直料理大会で過剰評価気味だったので今回はさほど変化がなかったのだ。

特に評価を上げることも下げることもなく終えたが、その代わりに矢面にたって木乃香を守っていた新堂が評価を上げたのが実情だった。

元々生徒や若い人には人気があった新堂なだけに名前くらいは聞いたことがあった者が多かったこともあり、麻帆良のVIP達に評価される下地はあったのだろう。

ただ本来はクリスマスが終わると落ち着くはずの店が、最低でも一ヶ月ほどは忙しい日々が続くのは嬉しいことであると同時に苦労もまた多かったが。

新堂やスタッフ達が一息つけるのはまだまだ先になるようである。



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