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平和な日常~冬~3

一方高畑の引き込みに失敗したクルト一派だが、メガロメセンブリアでは更に悲惨な状況になっていた。

一番の原因は中心人物であるクルトの失脚にあるが、ネギの去就で穏健派と過激派の双方を敵に回した中立派の一部であるクルト一派は今だに徹底的に叩かれている。

そして何より問題なのがクルトは自身の権力の源泉を失ったことだろう。

そもそもクルト・ゲーデルは英雄であるナギ・スプリングフィールドの仲間としての名声で元老院になれた人間である。

国家としてのメガロメセンブリアと赤き翼の関係は二十年前の戦争終了以降はアリカの件などで決して良くなかったが、実のところメガロには赤き翼の支持者は現在も多いしそれは天敵とも言える元老院ですらもいた。

何より二十年前の戦争で多くの血を流し前線で共に戦った軍にはかなりの支持者が現在も存在する。

クルトが中立派の代表格としてある程度の権力を掌握した背景には、そんな赤き翼の支持者達がクルトに味方したからなのだ。

しかしナギの遺児であるネギを政治利用しようとしたクルトに、そう言った赤き翼の支持者達は疑問を抱き距離を開ける結果となってしまった。

結果としてクルトからは権力も資金も人材も全てが流れ出てしまったのが現状である。

ちなみにこの結果には同じ英雄の仲間という名声を持つ高畑が、フェイトの存在が露見して以降メガロメセンブリアに一切協力しなくなったことも実はかなり影響していた。

ナギと同じく権力を求めず世界の為に働いて来た高畑は、クルト以上に赤き翼を支持していた者達への影響力がある。

そんな高畑がメガロに協力しないことでクルトを見限ったと考える関係者が多いことは、クルトにとって完全に想定外のことだった。

まあ一番想定外と言うならば、それはもちろんクルトの失脚してすぐに完全なる世界の存在が明らかになったことだが。

この黒幕はもちろん土偶羅だが、真実を知らない者で取り分けメガロ内部ではクルトが黒幕だとの説がかなりの信憑性を持っている。

なおクルト失脚に止めを刺した形となる高畑だが、本人にはそんな自覚は当然ながらあるはずもなく相変わらずクルトには不満や疑念と共に一定の信頼を持っているが。


さて少し話が長くなったがそんな訳で高畑への協力依頼は追い詰められたクルト一派の最後の賭けと言ってよかった。

現状で高畑自身はクルト一派の苦境はある程度の情報しか知らない上にネギですらも利用したクルトへの抗議の意味と、これから先明日菜を完全なる世界から守る為には麻帆良を離れる訳にはいかないという理由で即断ったが。

最終的に高畑がクルトの政治生命にほぼ止めを刺したのは、ある意味で二人の関係そのものを表してるのかもしれない。


ちなみに高畑は先程の男性と会う前にクルト一派が接触して来たことを近右衛門に報告しているし、男性と別れてすぐに話した内容も報告している。

近右衛門としては高畑に対し会うことは止めずに熟慮するようにとしか言わなく、話の内容を報告した後も高畑を労う言葉をかけて終わっていた。



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