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平和な日常~冬~3

少し時を遡って横島達がダンスパーティーに参加している頃、麻帆良市郊外にある人気のない公園に高畑と見知らぬ男性の姿があった。

すでに公園内は暗く街灯で最低限の明かりはあるものの、二人はあえてそんな明かりの届かぬ場所で一メートルほどの距離で向かい合っている。


「こういう形で呼び出すのは止めてほしいな。 話があるなら協会を通してくれ」

明かりの届かぬ闇の中で高畑はタバコに火をつけると、学校では決して見せないほど不機嫌そうな表情を見せた。


「高畑、我々に協力してくれ」

相手の見知らぬ男性は不機嫌そうな高畑に僅かに冷や汗を流すが、すぐに気を取り直し本題とも言える言葉を告げる。

暗がりでその顔は高畑からはよく見えないが、高畑自身は相手を知っているようで右手はタバコを吸っているものの左手はズボンのポケットに入ったままですでに戦闘体勢であった。

無音拳の使い手である高畑のその姿勢は、相手に対する威嚇である意外のなにものでもない。


「君達の理想は僕も理解しているし協力もして来たつもりだ。 しかし僕は恩を仇で返すような連中と馴れ合うつもりはない」

らしくないほど冷たく不機嫌なその姿に相手は戸惑いつつ協力してほしいと告げるが、高畑は表情を変えぬまま即答で拒否をする。


「まってくれ! あの件は我々としても不本意だったのだ!」

「その言葉を信じろと? 僅か十才にも満たない子供の将来を奪っておいてよく言う」

高畑が不機嫌な理由は相手の男性がクルト・ゲーデル一派の人間だったことだろう。

この日高畑は密かに連絡して来た男性に呼び出されて彼らへの協力を求められていたが、ネギの去就の一件で高畑のクルト一派に対する信用度は地の底まで落ちていた。

元々高畑は恩人の息子であるネギには普通の子供として育って欲しかった。

それが恩人夫妻の願いでもあったのだから。

そして自分達の目的の為には恩人の息子すら犠牲にしようとするクルトに、高畑は今でも怒りを感じている。


「今立ち上がらねばどうなるか君なら理解してるはずだ!」

「それで、行き場のない僕を受け入れてくれたこの地の仲間達を裏切れと?」

「誰もそんなことは言ってない!」

「言わなくてもわかることだろう」

冷静に淡々と語る高畑に対し相手の男性は若干熱くなるが、高畑はそんな相手を冷たい表情で見つめていた。

尤もいくら話しても無駄なのは高畑のみならず相手も理解している。

元々高畑とクルトは秘密結社完全なる世界の壊滅については協力しているが、その他は考え方がまるで違うのだから。

ただフェイトの存在が明るみになり秘密結社完全なる世界がまだ健在ならば、その点から協力を引き出せるのではとの目論みがあったようだ。


「君達のやり方では決して世界は救えない。 君もクルトもこの世界の人々のことを何も理解してないのだからね」

ちょうどタバコを一本吸い終えた高畑は、これ以上は時間の無駄だと言わんばかりに男性の元から離れていく。

相手の男性はそんな高畑に苛立ったのか奥歯を噛み締めるように高畑の後ろ姿を見つめるしか出来なかった。

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