「夢じゃないんだな…」

横島は魔鈴が部屋を後にするのを眺めて呟く

魔鈴の唇の感触が、昨夜の事が現実だと告げている


「未だに信じられんな…」

極度の自己不信である横島は、未だに魔鈴に愛されてるのが不思議で仕方ない


「横島さん～」

魔鈴がリビングから呼ぶ声に横島は、慌てて服を着て部屋を後にする


「さあ、召し上がれ」

味噌汁とご飯と焼き魚に冷や奴

純和風の朝食を横島に用意していた

「いただきます！」

横島と魔鈴は、お互い少し恥ずかしそうに微笑みながらの朝食になる


「……味はどうですか？」

魔鈴は、照れながらも勢い良く食べる横島を幸せそうに眺めて聞く


「美味いっすよ！　魔鈴さんのご飯は最高です！」

横島はちょっと照れたまま素直に褒める


「横島さん…」

魔鈴は幸せそうに横島を見つめ、横島も答えるように魔鈴を見つめる


「……２人共時間はいいのかにゃ？」

どれくらい時間がたったかわからないが、甘い沈黙を破ったのは黒猫である


「あっ！？」

２人とも突然の声に驚くが時間がヤバい

「早く食べて行かなきゃ！」

横島は残りの朝食を食べて、異界の魔鈴宅から店舗に移動する


「横島さん、行ってらっしゃい。　お弁当です」

魔鈴は横島に手作り弁当を渡して見送る

「行ってきます…　」

２人は別れを惜しむように、また見つめ合う


「時間が無いにゃ～」

黒猫はそんな２人を見てため息をつき、また声をかける


（僕が邪魔してるみたいで嫌だにゃ…）

損な役回りに苦笑いを出す使い魔の黒猫


「じゃ、本当に行って来ます」

横島は弁当を持ち、魔法のほうきでアパートに急ぐ

「行ってらっしゃい」

魔鈴は横島が見えなくなるまで見送って家に入る


「さてと…！　今日で最後ね」

魔鈴はバレンタインチョコを売る為に、いつもより少し早めに開店準備にかかる


一方横島は…

学校の制服に着替える為に、アパートに急いだ

時間が無い為、制服に着替えるとそのまま魔法のほうきで、学校まで飛んでいく


学校の裏の目立たない場所に降りた横島は、魔法のほうきを魔鈴の自宅に送って学校の中に入る


さすがは魔法のほうきである

時間ギリギリだったはずなのに、５分前に教室に到着した


「おはようっす！」

横島が席に着くと、愛子と不機嫌なタイガーが居た

「おはよう。　横島君は…機嫌いいわね？」

愛子は挨拶して、横島が機嫌がいいのを不思議そうに見る


「タイガーはなんで不機嫌なんだ？」

横島は不思議そうにタイガーに聞く


「バレンタインは嫌いですのジャー！！」

タイガーは不機嫌そうに叫ぶ


「お前、彼女居るだろ？」

横島は不思議そうに突っ込む


「それでも嫌なんジャー」

タイガーはチラリとピートの席を見ると、すでにバレンタインチョコが乗っている


「横島君…、なんかあった？　横島君がバレンタインにひがまないなんて変よ？」

愛子は疑うような目つきで横島を見つめる


「もう諦めたよ。　バレンタインにいい思い出無いしな…」

横島は疑うような愛子に、内心冷や汗気味にごまかす


「……まあ、いいわ。　ちょっとつまんないけど…　はい、私からの義理チョコよ」

愛子はイマイチ納得がいかないが、横島にチョコを渡す


「サンキューな！　愛子。　やっぱ貰えると嬉しいな～」

横島は笑ってごまかす


「横島さんのチョコ他の人より豪華な気が…」

タイガーは、自分やクラスメートが貰ったチョコと見比べて首を傾げる


「き…気のせいよ！」

愛子も笑ってごまかした