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その二

水族館デートから数日が過ぎるといよいよクリスマスまで秒読みとなるが、とある日の放課後に横島は都内の古びた喫茶店を訪れていた。


「おー、上手くやったな。 流石はオカルトGメン。」

しかしこの日横島の目の前には天敵とも言える西条であり、横島が喫茶店に入るとすでに到着していた西条から一束の書類を見せられ流し読みをするように目を通していく。


「全く、君のやることは本当に突拍子もないな。 人質の安全を最優先にと頼むのに苦労したんだぞ。 あの国は少し面倒だからな。」

「悪いな。 助かったよ。 でもあの情報はそれを頼んでもお釣りがくる価値あっただろ。」

それは雪之丞が関わっていた香港を中心とするオカルトマフィア壊滅の報告書だった。

実は横島はヒャクメに頼んで調べて貰った情報のうち雪之丞個人に関わる情報を抜いて、密かに西条に流して組織の壊滅と人質の救出を頼んでいたのだ。


「情報の出所は先生は多分勘づいたが、他には漏れてないだろう。 同業マフィアや内部からの裏切り者からのタレコミだと噂になってるからな。」

まるでどこぞの映画の主人公のようにスリルある人生を送る友人の雪之丞の現状を知った横島は、放置して死なれるのも寝覚めが悪いと考え一応ヒャクメに情報源の秘匿を条件に情報を流す許可を貰い西条に流していたようである。

西条自身は横島に使われるようで話を聞いた当初は渋い表情をしてはいたが、犯罪組織を野放しにするのは彼のポリシーに反するし横島も情報源さえ秘匿したら西条の成果にするなり点数稼ぎにするなり好きにしていいと告げて渋々引き受けた経緯があった。


「しかし何故君がわざわざ雪之丞君のことを調べたかと思えば、やはり女絡みだったか。」

「西条! てめえ!?」

「情報収集は君の専売特許ではない。 当然最低限の裏取りはさせてもらった。 だが彼女に関しては僕の胸に止めただけだから心配しなくていい。 ただし一つ貸しにしておくがな。」

明日の新聞には先の犯罪組織壊滅の情報が掲載されると説明する西条は雪之丞も数日以内に帰国すると告げるも、話が一通り済むと意味ありげな表情で横島がヒャクメに頼んでまで雪之丞のことを調べた原因について口を開く。

先日かおりと一緒の横島を見て驚いて見せた西条だが、実は彼は今回の件を横島が頼んだ折りに情報の裏取りをしたようで横島とかおりの関係を大まかにではあるが知っていたようである。

まあ別に横島を疑った訳ではないが普通に最低限の情報の裏取りは必要であり、ついでに掴んだ横島が動いた訳であるかおりの件は万が一にも犯罪組織の残党などによる報復が起きないようにと雪之丞の関与共々苦労して可能な限り秘匿した経緯があった。

西条からすれば貸しの一つくらいは覚悟して貰わねば割に合わないのだろう。


「お前のそういうとこなきゃ、尊敬するんだがな。」

「君に尊敬されようなどとは思わないね。 まあ今回は社会の悪が一つ消えたと思えば悪い話ではなかったが。」

一方の横島は令子との関係が落ち着くと西条と争う理由があまり無くなってはいたが、それでも互いに奇妙なライバル意識は残されたままである。

やはり横島では駆け引きなどは西条には遠く及ばずに一つ貸しを作ってしまったが、横島自身は正直あまり気にしてる様子はなく西条もまた貸しを取り立てれるとはあまり思ってない。


「まあ君と雪之丞君の修羅場をこの目で見れないことは残念だが僕も暇ではないんでね。」

結局西条は最後まで嫌みを口にして喫茶店を出ていくことになり、横島は深いため息をこぼしてしばし一人でコーヒーを飲むことになる。




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